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un.comfortable.
【純文学 その他小説】

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un.comfortable.プロローグ-1

「―雨。」

2月13日月曜日朝6時30分。私のこの一週間は思えばこの時既に決まっていたのかもしれない。

―‥‥最悪。
私は雨というものがさほど好きではない。理由は、別段対したものでもなく、自転車通学の為学校が憂鬱になるからだ。
「雨だから早く出るのよ。」
この母親は私を早く追い出したいに違いない。理由は‥‥
「カッパ持ったの?弁当は?こんなに遅くまで家に居て大丈夫なの?遅刻するわよ。あんたはいっつも慌てて事故するんだから。今度遅刻したらどうなるか分かってるの?ちょっとはまともにしたらどうなの?ねぇ、聞いてるの?」
「うん。」
―分かったから、黙ってくれ。
この押問答がどれ程人の気分を害するものか、この人は分かっていない。別に無神経な訳でも私が大嫌いな訳でもない。私の為。分かっている。でもだからこそ、私は余計に苛々する。

「行ってきます‥‥」
後半部分は恐らく誰にも聞こえていないであろう。私は欝憤を晴らすかように、そしてあの呪縛の念から解放された事を自分自身に自覚させる為に、ドアを勢いよく閉めた。
―ピシャンッッ
「ふぅ‥‥」
伸びをして一息ついた後、足取りも重く自転車に向かう。心なしか自転車が慰めてくれているような気がして私は思わず顔を伏せた。何故か涙が出そうになるのを必死で堪え、斜め35゜に向かって笑って見せた。
そこは灰色の不透明な世界。雨音だけが絶えず鼓膜を叩いた。
―行かなきゃ。
私は雨の中カッパと傘を持ち、灰色の世界に混ざった。


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