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バレンタインのご褒美
【OL/お姉さん 官能小説】

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エレベーター-1


「秋月さんっ」

バレンタインデーだというのに一人終電間際まで残業してエレベーターに乗ろうとしたら。
中にいた先客は、この去年の春に企画課に異動した後輩、村上和馬(ムラカミカズマ)だった。

「久しぶり。村上も残業?」

心拍数が上がったことに気づかれないように、冷静を装って声をかける。

「バレンタインなのに勘弁して欲しいっすよね」

苦笑まじりの村上は、一緒に働いていた時よりも少し大人びたような気がする。

「これから彼女とデート?」

からかいながらも、胸が痛い。
自分の気持ちに気づいた時には村上には彼女がいた。
大学時代からの付き合いだとかで、携帯の待ち受けにするほど可愛いコが。

「オレ、別れたんですよ。ってことで秋月さん、チョコ下さい」

あっけらかんと言ってのける村上の手には有名なチョコレートブランドの紙袋。
村上のことだから、企画課のオネーサマ方にも可愛がられているのだろう。

「はいはい、じゃあコンビニでチロルチョコ買ってやる」

まさか会えるなんて思ってなかったから、用意してこなかったことを悔やみつつも、憎まれ口を叩いてしまう。

「えー、いかにも義理じゃないっすか。っていうか秋月さんこそバレンタインデーにこんな時間まで残業してていいんですか?」

「うるさい」

大きなお世話だ、と言おうとした時、妙な音とともにエレベーターが大きく揺れた。

「えっ?」

「うわっ」

バランスを崩した私の体を村上が抱きかかえるような形で支えてくれた瞬間、照明が落ちる。

「ウソ」

「マジかよ」

私を抱き締めたまま、村上が非常ボタンを押す。
停電ではなく、故障らしいことはわかった。
エレベーター会社の人はすぐ来てくれるらしいが30分はかかるらしい。

「ケガないっすか?」

「うん…村上が支えてくれたから…」

「震えてますけど、寒いですか?」

コートは地下のロッカーの中だ。
空調も切れたのか、少しひんやりとしてきたような気がする。

「これ、羽織ってください」

村上は私を離すとスーツの上着を脱いで肩にかけてくれた。

「悪いよ、村上だって寒いでしょ?」

「秋月さん風邪ひかせるわけにいきませんって。こんなに震えて」

村上がそう言いながら再び私を抱き寄せる。

「ちょ、ちょっとっ」

「こうしてるほうが暖かいっすよ?それに秋月さん暗いのとかこーゆーの苦手でしょ?オレが守りますから」

私を安心させるように左手で私の頭を胸に押し付け、右手で優しく背中を撫でる。
村上の落ち着いた声と、伝わる鼓動が、安心を与えてくれる。

「良かった、一緒に閉じこめられたのが秋月さんで」

「え?」

「だってこれが課長とかむさ苦しいおっさんとかだったら最悪じゃないっすか」

「ま、まぁ確かに」

「とりあえず時間かかりそうだし座りますか?」

「う、うん」

壁にもたれるように座った村上が、太ももをぽんぽんと叩く。

「床に直に座ると冷えちゃうからここに座ってください」

「えぇ?」

立ったままの私の手を引っ張り膝の上に座らせた。



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