『秘館物語』第２話「訪問者」-1
ジャラッ、ジャラッ……
薄闇の空間に響くのは、鉄の鎖が擦れあう無機質な音だ。
「………」
その鎖は、望の細い首に巻きついている首輪から延びて、志郎の左手に掴まれている。
ぐいっ…
「あ、きゃうっ……」
まるで犬のようにそれを引っ張られた望は、やはり犬のように四肢で歩いていた方向を無理やり変えさせられた。
「………」
志郎は無言だ。何も言わないまま、足元の望を鎖で引いている。
その望は、一糸もまとわぬ裸身のまま、従順に主人に引かれながら、屈辱的であるはずの行為を享受していた。
彼女は今、“雌犬”となっている。文字通り、に。首輪をつけられ、裸のまま四本足で館の中を歩かされているのだ。
「はぁ……はぁ……」
ふるふると揺れる、“尻尾”。
もちろん、人間には尻尾など存在しないから、それは擬似的に望の体につけられたものだ。裸であるから衣服に縫い付けてあるとかそういうものではなく、生身の肉体に直接取り付けられている。
「く、はぁ……あ……」
望のア×スから、その尻尾は伸びていた。先端が数珠つながりのパールになっている、特製の淫具だ。それを肛門に突き立てられ、望は“犬”にさせられているのだ。
ブ、ブブ……
「ん、んひっ！」
“尻尾”が、更に激しく蠢いた。志郎が右手に保持していたワイヤレスのリモコンを使い、それを震動させたのだ。
「あ、ああっ……」
強弱を示すつまみのレベルを一気に上昇させて、望を責める。
「くっ、あっ、い、いやっ……うぅっ……」
今や、“最大の急所”となっている部位に責めを受けた望は、その歩行を止めて体を震わせた。
ぐいっ…
「ん、んぅ！」
それを咎めるように、志郎は鎖を引く。
「くっ……くぅっ……」
尻に襲いかかってきた汚辱的な違和感に責められながら、望は再び歩行を始めた。
「はぁ……はぁ……うっ…」
グルッ…… キュルルル……
「く、は……うっ……！」
不意に、望の足が止まった。下腹部を絞るような苦しみに、気をとられたからだ。
グルルル……グルッ、グルッ……
「う、く、くるし……ぃ……」
犬であるはずなのに人語を喋り、望は苦痛に顔をゆがめる。体を地に沈め、腰を揺すって、不意に訪れた猛烈な苦しみを何とかやり過ごそうとしている。
ぐいっ！
「ひぃっ！」
しかし、それはいつまでも許されなかった。
「も、申し訳……あ、ありません……」
戦慄く唇からか細い声が響くと、再び望は歩みを始める。しかし、その進み方は鈍重このうえなく、また、身体中に浮かび上がってきた汗の滴が、彼女の体に起こった異変を如実に表していた。
「あ、ああっ……ダ、ダメ……」
望がまたしても、足を止めてしまった。下腹が張りつめて、苦しくて辛抱できないのだ。
「お、お腹が……もう……あ、ああっ……」
何しろ彼女は、尻尾を取り付けられる前にその部分に薬液を注ぎ込まれている。そう、“浣腸”をされているのだ。
無花果型のそれをひとつだけ注入されたのみだが、望には効果が絶大だった。凝り固まっていた排泄物がグリセリン溶液によって液状化し、それが封をされている出口に集中している。
その状態で“栓”となっている埋め込まれたパールが、まるで中身を抉るように自律的な回転運動を始めているのだ。
「う……くはっ……い、いやっ……」
ミキサーのように直腸の中をうねり、かき回しているのだから、その責め苦を受けている望の苦しみを想像するに、背筋が凍りつきそうになる。
「だ、旦那様……お、お願い……」
哀願しながら、歪むその眉。
「………」
だが、“犬の喋る人語など理解できない”とばかりに、志郎は鎖をなおも引っ張って、望に歩行を命じた。
「あ、あぁぁ……」
主人の命令は絶対だ。望は、おぼつかない足取りのまま、排泄欲が込み上げてきた尻の穴を苛烈に責められながら、健気にも四足で歩みを再開した。