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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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4 塩の道-4


 一分後。
 カティヤは上空から、噂に聞く街道を眺め降ろしていた。

 内陸国で、塩は貴重品だ。
 多少の岩塩が採れるジェラッド国も、大部分を輸入に頼っている。
 もっとも大規模に生産されるのは、ストシェーダの南海に面した領村で、そこから各地に通じる街道は、いつからか『塩の道』と呼ばれるようになった。

「一度、塩の道を見てみたいと思っていたが、こんな形で眺めるとはな」

 ナハトに話しかけつつ、カティヤは片手で冑の位置を直した。
 兜はゴーグルも兼ね、目の部分は魔力を込めたガラスになっている。
 これは割れにくく、強風から目を守ると同時に、暗闇でも昼同様に辺りが見える優れものだ。

 アレシュが管理するこの領地は、海辺から一番近い城塞都市ゼノだ。
 南側から北に広がるように、扇状の城壁が都市を囲んでいる前景が見えた。
 堅牢な石造りのゼノ城は南よりに建ち、近くの川から引き込んだ水堀に囲まれている。
 市街地には白っぽい石作りの建物が密集し、北側にいくほど建物はまばらになって、オリーブ畑や牧場が目立つ。
 ゼノは規模こそ小さい田舎都市だが、塩が諸外国へ与える影響力を考えると、非常に重要な地点になる。
 更にこの付近は外敵が多く、危険極まりない地域でもあった。

 城壁の窄まった南部分に、巨大な鉄門が据え付けられ、そこから荒野や大森林を避け、歴史ある街道は長々と続いている。
 はるか遠くに、海らしい線がかすかに見えた。

 今まで、どれほどの旅人と品がこの街道を通ったのだろうかと、つい感慨深さに浸りたくなった。
 しかし、街道脇に点々と設置された烽火台が、緊急事態を告げている。

 海辺から都市まで、街道には隊商向けの旅籠がいくつもある。
 そこの住人たちや街道の安全を守るための烽火台だ。
 五つ目の烽火台付近で、魔法灯火とはあきらかに違う火が燃えている。

 本物の炎だ。

「ナハト、五つ目の灯りだ!」

 宙空でホバリングしているナハトに告げた。
 飛竜は一声鳴き、力強く前へ飛び始める。

 飛竜は、ドラゴンの中では小柄な種だ。
 身体のわりに大きな翼と長い首が特徴だが、小さいと言っても、人間でいえばまだ少女のナハトでさえ、全長で八メートルはある。
 高い知能を持ち、パートナーに認めた人間を一生涯信頼してくれるため、飛竜使いたちも自分の竜に誠意を尽くす。
 騎馬と違うのはそこだろう。
 飛竜は乗り物や家畜ではなく、家族なのだ。

 目的地まではかなりの距離があったが、飛竜の速度は凄まじい。腰のベルトで身体を固定し、しっかり手綱を握る。
 猛スピードで景色は後ろに遠ざかり、煙と血の匂いがぐんぐん近づく。
 そこではすでに、アレシュ達が襲撃者を相手取っていた……。




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