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Eプラント
【ホラー 官能小説】

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球根-5


「Eプラント」というのは植物の名前なのだろうか? 説明書を付けているくらいだから珍しい種類の物なのかとも思ったが、読んだ限りでは、球根から植物を育てる場合の、ごくごく一般的なメモ書き程度のモノでしかなかった。
 どんな花が咲くのか、どんな実が成るのか、そういうことの方を教えてくれればいいのにと思いながらも、あまり細かいことは気にしない性格のユリは、すぐに気持ちを切り替えて、とりあえず、球根を見てみることにした。

 箱の蓋を開けてすぐ際まで、おがくずが一杯に詰められていて、それを退かしていくと中から握りこぶし大の球根が出てきた。

(コレ、思ったよりも大っきいなぁ)

 大きさと形だけだと、スーパーなどで売られている紫タマネギのような外見なのだが、色の濃さと手で触った感じが全く異なっている。黒っぽい深紫色の表面はツルツルして光沢があり、下から見ると、タマネギというよりは、丸くて大振りのナスにそっくりだった。

(おナス……じゃないよね?)

 栽培した経験はないけれども、トマトなんかと同じで、苗から育てていくのが家庭での一般的な栽培方法だし、そもそもナスは球根を残すような植物ではない。

(まぁ、育ててみてのお楽しみってことか)

 手前勝手に納得したユリは、球根を持ったままバルコニーへ出ると、園芸用に使っているキャビネットから必要な物を探した。メモに書いてある大きさの鉢はすぐに見つかり、土も他の物を栽培したときに使った残りがたくさんあった。
 指示通りの割合で2種類の土を混ぜ、ある程度の高さまで植木鉢に入れ、球根を据えて上から土をかけ、頭のところだけ出るように埋めていく。最後に、室内へ置くための水受け用プレートを植木鉢に嵌め込んだ。

(何処に置こうかな……?)

 植木鉢を抱えてリビングに戻ったユリは、部屋を見渡してみた。バルコニーに面した南向きの大きな掃き出し窓が主な光源なので、鉢の置き場所は必然的にその近く、ということになるのだが、東側の隅を観葉植物の大きな鉢が占領していたので、すぐ横に置くと邪魔になるような感じがした。かと言って、反対側だとバルコニーの出入りに不便になってしまいそうだった。
 少し悩んだ結果、寝室に使っている隣の部屋に置くことに決めた。ここなら、リビングと同じようにバルコニーへ出る窓のカーテンを開けておけば、たくさん日光を浴びさせることができそうだった。ユリは、たっぷりと水をやって、大きなダブルベッドの足下の方のバルコニー側の一角に、球根の鉢を置いた。

(水をあげるのを忘れないようにしなきゃね)

 心掛けた通りに、毎日キチンと世話をしながら、ユリは球根から芽が出るの楽しみに待った。


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