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addict
【学園物 官能小説】

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addict-3


「えー、それでですね…」
委員会が始まり、教壇に立った大宮 聡が進行をしている。
爽やかな声が耳に残る。何度も心の中で繰り返したことがある声だ。でもこれは現実で、現実の中で、和子は大宮 聡の声を聞いている。

やっぱり、格好いいな…

和子は改めて思う。

初めて見たときから格好いい人だと思っていた。だけど、見かけるたびどんどん好きになっていくのが分かった。自分でも、ここまで惹かれるなんて思わなかった。

ふと、聡がこちらを見た。目が合う。思わず和子はぱっと目を反らした。
目が合うという、たったそれだけのことなのに心臓がおかしくなりそうだった。


和子も人並みに男性経験はあるが、聡と比べれば過去の男の人なんてクズみたいなものだと思った。
聡の事を思うと、全てが靄(もや)の様に霞み、そのことしか考えられなくなるのだから。

見惚れてばかりで、委員会はすぐに終わってしまった。
名残惜しそうに席を立ち、教室を出る。もちろん、聡とは一言も交わすことはなく。

また、溜め息を吐く。それは聡と同じ教室で、同じ空気を吸えた喜びであり、一言も交わすことなく終わってしまった悲しみでもあった。

廊下を歩きながら、どうせ、先輩には私のことなんて視界の隅にしか映っていないんだろうな、と和子は自嘲気味に思った。どうせ、どんなに想っても届くことはないのだ。
ただ同じ委員会なだけで、これが終わってしまえば先輩は卒業してしまって、会えなくなる。本当に終わってしまうに違いないんだ。

一言も、交わすことすらないまま。

不意に和子の足が止まった。そして、どういうわけか今来た道を戻っていった。


もう結構な時間なので、廊下には誰もいなかった。
和子は、さっき委員会を開いていた3年2組の前に立っていた。ここだけ電気がついている。
そっと中を覗いてみるが、中には誰もいない。
聡が残って仕事をしているのだろうと思っていたので、拍子抜けした。
しかしその代わりに、机の上にひとつの鞄が置いてあった。

足音をたてず机に近づく。そしてその鞄にそっと触れてみた。

心臓が、激しく鳴る。

朝登校して来るときや下校するときにいつも彼が持っていたから知っていた。

この鞄は、聡の物なのだ。
和子は急にやり切れない気持ちに襲われた。

「大宮…先輩…」

小さく呟いて鞄を抱き締めた。
自分でもおかしなことをしていると分かっていた。でも誰かが見ているかも知れない、なんて心配はしなかった。

聡が恋しかった。聡に近付きたかった。そう望むのはそんなに贅沢なことだろうか?


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