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煙草
【悲恋 恋愛小説】

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煙草-1

 煙草をふかしてみる。少し喉に不快を感じるがそうでもない。それよりもすっきりする。俺が煙草を覚えたのは彼女(ミキ)ともっと時間を共にしたかったから。

あれは、俺が二十歳になる前だった。ミキに会ったのはその一年半前。学校が同じになり、隣の席になった。
 ミキは150くらいの身長で痩せており、目の大きい、連れてる男は得意になる女だ。でも、ミキのもつ今風のギャルの様な雰囲気にずっと話し掛けられず、目すらも合わせられなかった。俺とは合わないタイプなのだと思っていた。
 ずっとそんな関係だったが、一年が過ぎ、俺達は二年生になった。二年生ではグループに分けられ、俺とミキは同じグループで活動することになった。
 そうするとやはり、帰り道も一緒だった俺達はグループの愚痴を話すようになり、毎日ミキの愚痴を聞きながら帰っていた。俺は少しミキが好きになってきていた。
 いつも駅に着くと、ミキは煙草をふかす。俺は寒いながらもミキが吸い終わるまで話しながら、ミキをみていた。そんなことを毎日していると、ミキともっと一緒にいたいと思う自分がいた。

 ミキは昼休みにいつも他の友達と外に煙草を吸いに行く。そんなミキに俺は仲が良くてもやはり吸わないのだから着いていけない。俺の知らないところでミキは何をしてるんだろうと俺はいつも思っていた。
 その頃俺は学校が憂鬱で人生にやる気や希望さえも持てずにいた。そんなブルーな気持ちとミキともって一緒いたい、ミキの好む煙草とはどんなものだろうと思うようになった俺は、煙草を吸ってみることにした。案外普通によかった。少し大人になった気がしたし、何よりもミキに近づいた気がした。それが俺の誕生日の二週間ほど前だった。
 次の日、俺はミキと昼に外へ吸いに行きたかったが、やはり急に始めたということに恥ずかしさを感じた。二、三日は無理だった。
 その頃一緒にやっていたグループ活動も終わってしまい、ミキと一緒にいることも少なくなってしまった。俺は少し寂しくなり、勇気を出して一緒に外に行きたいと言った。
ミキは不思議そうな顔をしたが、「なんだ、吸ってるなら言ってよ。一緒に行こ。」と笑顔で言ってくれた。
俺はすごく嬉しかった。ミキのあの笑顔ともっと一緒にいれる時間ができることに。ミキは俺が吸う姿に珍しそうにしている。
「いつから?」
「つい最近」
「なんで?」
やっぱりこの質問がきた。
俺は平静を装い、「学校とか最近やなことばっかじゃん。だから」
「そうだよね。やなことだらけだよね」
ミキは俺の答えを素直に聞き取り頷いた。

それから毎日昼休みはミキと一緒。とは言っても友達も一緒だが。俺は嬉しかった。ミキとはメールや電話もするようになったし、休みの日でも遊びに行くこともあった。自信過剰にもミキは俺に好意があるのかとさえ思った。こう満たされてくるとやはり人は欲が出る。俺もやはりミキともっと一緒にいたいという気持ちが強くなった。告ろうかと思った。でもこの満たされていることが、ミキに告ったことで、もしかしたら断られ、崩れてしまうのではないかという不安に襲われる。
 そんなモヤモヤした気持ちの中、俺のこの気持ちを一気に崩していくことが起きた。ミキに彼氏がいると友達に聞いた。俺はやっぱりそうかと思った。あんなかわいい子に彼氏がいないわけがないのだ。ミキのためにミキともっと一緒にいるために覚えた煙草。俺は何のためにこれを今吸っているんだ。こんな思いをするならミキを好きになるんじゃなかった。俺はどうしようもなく自分がいやになった。
 やっぱりミキに彼氏がいるのは本当だった。楽しそうに遠恋をしている彼氏の話をミキは煙草をふかしながら俺に話している。俺は精一杯の笑顔で煙草を吐きながら頷く。その笑顔が俺の心に突き刺さる。この笑顔は俺のためではないと。この時の煙草ほどまずいものはなかった。

今でもミキは彼氏と付き合っている。俺はミキのためにと覚えた煙草を今も止められずに吸っている。煙を吐くと共に俺は最近、清々しい気持ちになる。ミキへの思いを吹っ切れてきているのかなと、俺は少し大人になった自分に笑ってみたりする。


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