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風船、風鈴、蝉時雨
【悲恋 恋愛小説】

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風船、風鈴、蝉時雨-6

鈴音へ。

この手紙を読む頃、俺はもう居ないと思う。
安心した?もう俺の世話しなくて良いと思うと楽になれるだろ?
俺の事は忘れていいから。
完全に忘れて、他の男と付き合って、結婚して、幸せになって。
俺のせいで鈴音のこれからの人生縛りつけんの嫌だからさ。

正直、こんな風になるなら、ハナッから出会わなきゃ良かった、とも思う。
って、そんな事言ったらまたお前にぶっ飛ばされんな。
楽しかった。
鈴音と会えなかったら、こんなに笑う事も無かったかもしれない。
ホントありがと。
アリガトって言葉じゃ足りないくらい感謝してるよ。

だけど、もう会えない…。
もう疲れちゃった。
なんか、生きれる自信がなくなってきた。
やっぱり抗えないモンなんだな、こうやって直面すると。
すげぇな、死ぬ間際って、ホントに色んな事フラッシュバックすんのな。
キリがない。後悔ばっか溢れ出る。



ねぇ鈴音。
僕は君に何をしてあげられましたか。
君を幸せに出来てたんですか。

僕は鈴音と一緒に居られるだけで幸せでした。
君だけが僕の存在理由でした。
何も出来なかったけど。
最後に鈴音の顔見れて良かったよ。
今まで本当にありがとう。

愛してるよ。





「…孝宏ぉ…っ」
手紙の上にパタパタと涙がこぼれ落ちた。
手は震え、膝にも力が入らなくて立っていられない。

「孝宏ぉ!行かないでぇ…っ」

あたしの叫びは虚しく、病室の沈黙さに響き渡った。


あたしは赤い風船に一枚の紙を閉じ込め、孝宏に届くように…と、風船と指を繋いでいる細い白い紐を離した。


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