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スプーン・ポジション
【女性向け 官能小説】

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最低のオトコ-3



部屋に入ってしまったら一気に野獣モードへ。


相手に迷いや躊躇いが生じないように、部屋に入るなり服を剥ぎ取って、待ちきれないように素早く貪りつく。


「こんなに俺を夢中にさせて……責任とってくれますよね……」


クサいセリフだとは思うけれど、こういう時は少し芝居がかっているくらいのほうが、女も燃える。


あとはもう体力が続く限り、攻めて攻めて攻めまくるのみだ。


尽くすばっかりのセックスは正直疲れるけれど、これが俺に出来る唯一の「営業活動」だと割り切ればさほど苦ではなかった。


実際俺はこの方法で月に数百万円の売上を作っていたし、ベッドの上でのコツなどをもっと詳細かつ的確に語ることも出来るけれど、さすがにそれを面接でやるわけにはいかないだろう?


それにこの裏技は、俺自身が40に近づき、結婚して子供が出来た辺りでほとんど効力を失ってしまった。


若くて生意気な後輩たちにどんどん成績を追い抜かれ、気がつけば俺はリストラ対象者リストに名前が載っていた。


「今年度中に自主退社という形をとられるなら、退職金をお渡し出来ると、まあそういう訳です―――」


そう言ってニヤニヤ笑った人事課の男の見下したような顔が、今でもハッキリと脳裏に蘇ってくる。



「……あーあ……」


陰鬱とした気分を紛らしたくて、タバコを手に取りベランダへ出た。


手すりに肘をついて、ひしゃげたキャスターの先に火をつける。


最近はタバコ代もバカにならない。


一本吸うたびに、無意識にあとどれくらい残っているか、つい指で確認してしまう。


そんな自分が惨めったらしくて、喫煙という行為そのものに、軽いストレスを感じてしまうくらいだ。


勿体ないから出来るだけ長い時間肺に吸い込んで、ちびちびとゆっくり煙を吐いていると、大通りのほうから一台のタクシーが曲がって来るのが見えた。




あ……アイツ……かな―――?


もう夜中を回っているのに隣の部屋がシンとしていたから、なんとなくずっと気になっていた。


疲れて仕事から帰って来た時、部屋は違っても同じ建物の中に人の気配があるだけでなんとなくホッとするし、孤独が紛れる。


特に隣の女とは、最近になってちょくちょくベランダで言葉を交わすようになっているから尚のことだ。


雨が続いて洗濯物が乾かないとか、今日はチキンカツ弁当がよく売れたとか――そういう中身のない会話がほとんどだけれど、そういう日々のささやかな出来事に共感しあえる相手がいるだけで、なんとなく人生は救われる。


思い込みが激しくて鼻っ柱の強いところがあるけれど、あれでなかなか素直なところもあって憎めない女だと思う。


腕時計を見ると、ちょうど一時を回ったところだった。



「こんな時間まで飲んで……またベロベロに酔っ払ってんじゃねぇか?」


この前みたいに、またわけのわからないことを言って絡んでくるかもしれないぞ。


まぁアイツも会社で色々あるみたいだし、少しぐらいなら、愚痴につきあってやってもいいけど―――。


そんなことを思いながら見ていると、タクシーは案の定アパートの前に停まり、中からスーツ姿のアイツがふらつきながら出てきた。




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