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妖精トム・ソーヤの繁活
【ファンタジー 官能小説】

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敬愛地区で-3

「おい、トム・ソーヤもう良いだろう。出て来てくれ」
ハジメが言うと、みんなの前に突然大きなシャボン玉が現れた。
その中に10才くらいの少年が入っている。黒くさらさらした髪の毛に黒い瞳、トム・ソーヤと言ってもどう見ても同じ黄色人種の男の子だ。
服装は物語に出て来る妖精のような格好をしている。
三角帽子に緑の上着と黄緑のタイツ。靴も先が尖って反り上がっている。
見方によっては学芸会の衣装に見えないこともない。
けれどもその顔は女の子と間違えるほど綺麗な顔をしていた。
シャボン玉の表面の虹のような色がくるくる変わって、それからシャボン玉が縮んでトム・ソーヤの体に吸収された。
「なんだい?今のシャボン玉みたいなのは。あんなの初めて見たぞ」
ハジメが聞くと、トムは答えた。
「普通は僕の妖精球は目に見えないけれど、可視化することに成功したんだ。この方が超自然的でカッコ良いだろう?」
ハジメはそのことにはそれ以上の関心を示さなかった。
「まあ、それでもよく俺達のピンチがわかったな。お陰で助かったよ」
「廃ビルにいなかったから、ここかなと思って来たら大変なことになっていたからさ。あいつらまた来るかな?来たらこらしめてやるけど」
「来ないと思うよ。恐ろしい目にあったんだから。何しろ見えない妖精に急所を蹴られたり、転ばされたりしたんだから」
「そうか、残念。来たらまた遊んでやったのに」
「中に入らないか。雪下めぐみのポスターを持ってきたからさ」
トムが頷くと、他の子供達も一緒に隠れ家の中に入った。

みんなは輪になってポスターを見ていた。
「雪下めぐみって年は幾つなんだい?」
トムが聞くと、ポンちゃんが答えた。
「14才だよ。ああ、憧れるなあ」
「それなら、ちょうど良いな……」
「なに?なにがちょうど良いの、トム」
クリちゃんが体を乗り出した。トムは女の子たちの方を見ながらちょっと躊躇った。
「うん……僕はもう11才になるから……繁殖活動をしなきゃ駄目なんだ。
つまり妖精の子供を作るってこと。その相手に14才くらいならちょうど良いかなって……」
メイは飛び上がった。
「ええっ! トムはもう結婚するの? ってことは、そのアイドルとHしようってこと? いやらしい」
「トムのスケベ!」
小2のヒナも立ち上がってトムに指をさした。メイは続けた。
「それに、どうして私じゃなくて、雪下めぐみなの? トムのことは小さい頃から知っているよ」
「あたしでも良いよ。ヒナをお嫁さんにして」
トムは困った顔をした。
「二人とも勘違いしてるよ。結婚するんじゃなくて……繁殖と言うのは……仲間を増やす為にするんだ。
それにヒナは勿論だけれど、メイはまだ体ができていない」
「わたし、12才よ。トムより年上なんだけれど……」
それにトムが答える前にポンちゃんが泣きそうになった。
「トム、頼むから雪下めぐみはやめてくれ。俺ファンなんだ。雪下めぐみが妊娠して腹が大きくなったらアイドルをやめなきゃいけないだろう」
トムはちょっと上を向いてからポンちゃんに言った。
「大丈夫だよ、ポンちゃん。雪下めぐみのお腹は大きくならないし、アイドルをやめることもないよ」
「えっ、そ……それはどういう」
「妖精と人間は違うんだってことしかいえないよ。とにかくそういうことだからしばらく皆には会えないと思う」
「そうかい。残念だな。だが、暇ができたら時々は顔を出してくれよ」
ハジメがそう言うと、トムは頷いた。そして……消えた。
   


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