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秘め事の系譜 シホ
【同性愛♀ 官能小説】

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摘み食い-2

 手にした水着を再びロッカーの扉に掛けると、シホは全裸のままアケミに身体を向けた。片手を腰に当て、乳房も秘所も隠す事をせずに全身を見せている。
 堂々としているシホと対照的に、アケミの方は恥ずかしそうに顔を背けた。十歳以上も年下の娘は両手を前に合わせ、もじもじといった様子で顔をほんのりと赤らめている。
 先日、シホがアケミに見せた痴態を考えると、立場が完全に逆である。
 可愛らしい彼女の様子に、シホは自分の心がざわついてくるのを感じていた。
「その……、彼、私を抱いている時も、なんというか乱暴というか、おざなりというか、自分だけが満足して終わってしまうんですよ。私、男性と付き合ったことがあまり無くて、そういうものかって思ってたんです。男の人が終わったら、それで終わりって……」
「身体だけが目的って感じ?」
「ええ、まあ……。それで、お二人が私の目の前で……その……、愛し合っているのを見て、自分たちと全然違うなって。キスだけでもまるで違ってて……。女同士なんだから違うのは当たり前なのかもしれませんけど、そう思ったら、なんか、急に冷めてきちゃったんです」
「で、冷静になって自分たちの関係を見直してみた、と」
「はい。それなりに男性経験の有る友達にも相談してみたんですけど、やっぱり恋人としては、まとも男じゃなかったみたいで……」
「まあ、男を見る目なんて、経験を積んでいくしかないわね」
「はは……、そうですね」
「でも、あなたはそれで良かったかもしれないけど、これからのことを考えると、こっちはちょっと憂鬱だわ」
「憂鬱?」
「そうよ。だって、実際のところはどうあれ、あなたたちは一応は付き合っていたんでしょう? それが別れたって事は、彼、遠慮無しにサチコに手を出してくるわね。まあ、今までも遠慮していたかは怪しいもんだけど」
 シホは全裸のまま、豊かな乳房の下で手を組み、軽く溜息をついた。
「ああ、それなら大丈夫です。彼にはこのジムを辞めてもらいました」
「……は?」
「あんまり好きなやり方ではないんですけど、伯父がここのオーナーなんです」
「……ああ、そういうこと」
 ようやくシホは、アケミがVIPフロアに入れる理由が分かった。同時に、アケミの持つ品の良さにも納得がいった。
 シホたちが通うジムのオーナーは、スポーツ関係の事業で有名な人物である。典型的な親族経営を行なっており、関連する事業も一族で経営していると、シホはニュースサイトなどで読んだ事がある。
 親族で株を持ち合って強固な経営体制を敷いているとのことで、おそらく彼女自身も名義上は大株主なのだろう。学生の身分だから自分で自由に使う事は出来ないだろうが、アケミはあの男など足元にも及ばない資産家であるに違いない。
「彼はそのこと、知っていたの?」
「いいえ。あんまり色眼鏡で見て欲しくなかったのと、外では実家のことをべらべらと話さないようにって、母に言われていたので」
「実家? ああ、なるほど、今は一人暮らしなのね。それで、例のヒロ君はあなたの素性を知らないままに、都合の良い女扱いしていたと」
「ええ、まあ……」
 あのインストラクターは逆玉の輿を逃した事になるが、もちろん、可哀想などとは微塵も思わない。
「もしかして、この間の格好も彼に合わせていたの?」
「ええ。でも、慣れない格好はするもんじゃ有りませんね。正直、しばらく男はコリゴリです」
 男に執着しているような先週の言動を思い返したのか、ちょっと恥ずかしそうに微笑んだアケミは、年相応の可愛らしさを見せていた。もしかしたら、例のヒロ君は街で今のアケミとすれ違っても気付かないかもしれない。
 先週、ロッカールームに闖入してきた時には、娘のレイナにはああなって欲しくないと思ったが、清楚で大人の入口に立った女性という雰囲気を持つ今日のアケミは、娘のお手本になって欲しいと思わせるような、心地良い空気を漂わせていた。
「女なら?」
「……え?」
 先週のトゲトゲしさが全く無いアケミの笑顔を見たシホの心に、ただの好印象とは別の感情が湧き上がって来た。それは、食欲にも似た感情であった。
 シホは無意識に自分の唇をペロリと舐めた。
「女性とのお付き合いなら、どうなのかしら?」
「その……、正直なところ、興味は有ります。お二人のキスが、とっても印象に残っていて……」
 頬を赤らめ、少し俯いたアケミの様子が実に可愛らしい。元々消すつもりも無かったが、シホの心に灯った欲望の火は、あっという間に燃え上がってきた。心の奥で燻っていた火が、アケミの正直な想いという風を受けて、燎原の火のごとくシホの心に広がっていく。
 シホは、自分の吐息に蜜のように甘いものが含まれてくるのを感じていた。
「昔の人は、ホントに良いコトを言ったわよね」
「はい?」
「何事も経験よ」
 シホは全裸のままアケミの正面に立った。背はアケミの方が少し高い。軽く見上げるような格好で、シホはアケミの両頬に手を添えた。そのまま、アケミの目を見つめる。抵抗する様子は無い。
 お互い、薄く目を閉じ、ゆっくりと唇を重ね合せた。
「ん……」
 口付けを交わしながら、シホは両手をアケミの腰に回し、豊満な体を密着させて抱きしめた。熟れた形の良い乳房が、娘との間で潰れたようになる。
「んん……!」
 見た目の若い熟女と、実際に年若い娘は身体を合わせたまま、唇を重ね続けた。人気の無いロッカールームが、濃密な甘い空気に満たされていく。
「ん……ふ……」
 ほんの少し唇を離したシホは、鼻をすり合せたままアケミの唇に囁いた。
「舌を出して」
「はい……」
 おずおずといった様子で、薄く口紅の引かれた唇の間からピンク色の柔らかい肉が差し出されてきた。その肉は唾液に濡れ光りつつ、別の生き物のように口腔から這い出してきている。


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