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華詞―ハナコトバ―
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華詞―ハナコトバ―4の花-4

「すみません。付き合わせてしまって。お茶といってもうちのアトリエなんですけど…大丈夫ですか?」
「え?アトリエに行ってもいいんですか?楽しみです。」
「よかった。」

染井さんは優しく微笑むとゆっくりと車を発進させた。

アトリエは少し駅から離れた住宅街の一角にあった。
裏路地のような場所にあり、地図でもない限り見落としてしまいそうな一見普通の一軒家だった。

「どうぞ。今日は僕一人しかいないのでゆっくりしてくださいね。」

私をソファまで案内すると、染井さんは布を奥の部屋にしまいにいってしまった。
外からはわからなかったが、アトリエはとても広く、吹き抜けになっている内装は光がよく入り気持ちが良い。
さまざまなウェディングドレスがラックにかかっており、フィッティングルームには大きな鏡が設置されている。
どのドレスもとても繊細な作りで、人気が出るのにも納得がいく。
しばらくドレスに見惚れていると、染井さんが紅茶とお菓子を持って奥の部屋から出てきた。
「紅茶で良かったですか?今コーヒー切らしてるみたいで…。」
「あ、はい。お構いなく。」

染井さんはテーブルに紅茶とお菓子を置くと私の前に座った。

「本当にどれも素敵なドレスですね。」

お世辞ではなく、どれもビーズや刺繍などが細かく、美しいものばかりなのだ。

「ありがとうございます。僕がだいたいのデザインを決めて、あとはみんなで色々とアイデアを出し合いながら制作していくんです。うちの事務所はとてもアットホームなので、その温かみがドレスに出ていると良いなと思っています。」

染井さんはインタビューに答えるように私に話すので、なんだかおもしろくてついつい笑ってしまった。
「すみません。なんかあまりにも形式的なお返事だったので…。」
そういうと、染井さんは少し顔を赤らめる。
「え、あっ…すみません。最近雑誌とかテレビのインタビューが多くて…なんか説明してるみたいでしたよね。ごめんなさい。」

困りながら笑う染井さんは何だか年齢よりも幼く感じた。
私のことを年下というが、染井さんも童顔じゃないかなと心の中で思ってみる。

「そういえば、私の名前、なんでご存じだったんですか?」

困り笑いをしていた染井さんが、今度はビックリしたような顏で私を見返した。

「えっと…その、この前控えをもらった時に名前が書いてあって覚えてたんです。素敵な人だなと思って…。」

そこまでいうと、染井さんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。
2人しかいない空間で真っ赤になられると、私まで恥ずかしくなってしまう。
染井さんはもしかして私のことを気に入っているのだろうか…?
急に意識し始めて私の顔もだんだんと熱っぽくなってきているのを感じる。

「「あの。」」

少しの沈黙のあと、2人とも同時に話を切り出す。
お互いを見合うと、おそらく2人とも顔が赤かったのだろう。
自然と笑みがこぼれてきた。


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