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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキ!U 『是奈、エースを狙え!?』-7


 〜〜〜〜〜

「なぁ田原ァ……今あそこで試合をしている女の子が、お前に向かってVサインを出していた様な気がするがぁ……」
「はぁ〜〜? まさかぁ……チョキでしょ」
「あっ、な〜〜るほど、そうかそうかぁ。……でっ、どこまで話たっけ?」
「だからさぁ。重量がふえると前後のバランスが悪くなるだろ! なんたってキャンプ道具一式だと、50kgは軽く越え
るんだぜ!」
 どうやら嘉幸と信彦、話に夢中のようである。

 〜〜〜〜〜

(田原くんが観てる。田原くんが観てる。田原くんがあたしを観てるぅ!)
 是奈、とっても幸せ一杯だった。今まさに、憧れの君である『田原 嘉幸』の、熱い視線を独占しているかと思うと、胸
が張り裂けそうで、いやいや、このまま死んでも良いとすら思って居たかもしれない。
 そんな是奈の熱いハートを感じながら、彩霞も。
「よーし是奈ぁ! 次の試合、お前の熱っつーーい思いの丈を、般若(はんにゃ)のような玲子の顔に叩きつけてやれっ!」
 そう言って是奈の気合を後押ししていた。
「なんですってぇーー! このわたくしからサービスエースを取ろうなんて、素人のくせに生意気ですわねっ! そんな事
10億万年早いですわよ!!」
”ピピーーッ! 緑山さん! 私語は謹んでくださいっ! それから『10億万年』って、あなた日本語が変ですよっ! 
注意してください!”
「ず…ずみまぜん……」
 なにやら、又しても審判に叱られた玲子。逆恨みとは言へ、なにやら相当頭に来ているらしい。真っ赤な顔をして湯気を
出し、角まで生やして、しきりにコートを ”ゲシゲシゲシッ”っと踏んごくっていた。

”2(セカンド)ゲーム! 『朝霞』サービス! プレイッ!!”
 
 第2ゲームはどうやら、是奈のサービスゲームの様である。
 是奈は慣れない手つきでボールを弾ませながら、サーブをするべくコートのライン際に立つと。ときどき嘉幸の方をチラ
チラ見ながら、それでも力強くサーブを打ち出した。
”フォールトッ!”
 おしい、ファーストサーブはネットに突き刺さった。
「ドンマイ! ドンマイ! 肩の力を抜いて、思いっきり、めいっぱい力を込めて、玲子の不細工な顔に打ち当てる感じで、
やっちゃってくれぇ!」
「なんですってーーっ!」
 彩霞のお茶らけた指示も、玲子の突っ込みも、だいぶ慣れて来た是奈であった。そんな二人の漫才のお陰も有ってか、ど
うやら肩の力も抜けて来たようである。
 是奈は。
「今度は入れるわねっ」
 そう呟くと、一瞬、嘉幸の姿をチラリッ。

 〜〜〜〜〜

「だからさぁー! 重いのなんのって、こうダンシング(立ち漕ぎの)して、必死に漕がないと前に進まないのなんのって」
「ほほ〜ぅ…… そいつは難儀だなぁ。俺はやっぱり、軽い車体の方がいいなぁ……」
 嘉幸は、必死に両腕を前後に激しく揺すりながら、まるで ”ハッスル! ハッスル!”とばかりに、自転車を漕ぐ真似
をしてみせる。
 それを見て信彦も、腕を組みながら、ウンウンと大きく、頷いていた。

 〜〜〜〜〜

「あっはぁ〜! 田原くんったら、なんなにガッツポーズして、応援してくれてるなんて、なんだか田原くんの方が固くな
ってるみたい」
 是奈、なんだか嬉し気である。
「観ててね田原くん! 今度はちゃんとサーブ決めるからっ!」
 是奈、今度はそう呟くと、なに気にもっていたラケットを嘉幸に向かって振って見せた。


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