投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

おぼろげに輝く
【大人 恋愛小説】

おぼろげに輝くの最初へ おぼろげに輝く 11 おぼろげに輝く 13 おぼろげに輝くの最後へ

-2

「曽根ちゃん、もう寝ましょう」
 そう言うと曽根ちゃんは無言で腕をついて立ち上がり、布団へ歩いてきた。
「枕は曽根ちゃんが使っていいよ。俺は座布団を折り曲げて使う」
 彼女は「ありがと」と呟くみたいに言って、布団を折り曲げて脚を入れた。矢部君みたいに細くて折れそうな脚ではなく、白くてしなやかそうな、艶かしい脚で、それだけで俺はぞくっとしてしまった。
「そいじゃ電気消すよー」
 俺は白熱灯のコードを引っぱり、それから曽根ちゃんの隣に滑り込んだ。布団は少し冷たくて、でも曽根ちゃんがいる側はほかほかしている。
「曽根ちゃん、俺、童貞なんだよ」
「知ってる。何度も言わないで」
 手に当たった曽根ちゃんの手をすかさず握り、その冷たさに驚愕する。暖めなければ。俺は両手を使ってその手を暖めに入った。手を手で挟み込みながら口を開く。
「その行為に入って行くやりかたも分かんねぇし、誘い方も分かんねぇの。相手がしたがってるのかも分かんねぇし、それから」
「塁は、私としたいの?」
 俺の言葉を遮るように彼女の言葉が通り過ぎて行く。彼女の質問を頭の中で反芻し、それから握る手に力を込めて「したいよ」と伝える。
「私だってまともな男とした事がない。ちゃんと、好きでしてくれるのは塁が最初かもしれないから。お互い様です」
 曽根ちゃんのもう片手が俺の手に添えられ、ひんやりとする。女の手ってどうしてこんなに冷たいんだろうか。ふと考える。考えても答えは出ないから、俺が暖めてあげればいいという結論に達すると、俺は彼女を抱きしめた。
「痛くない? 背中」
「うん」
 消えてしまいそうな声で、俺の身体に必死にすがりつくように身を寄せる彼女が愛おしく、俺はそのままキスをした。身体の全てにキスをしてやりたかった。俺はさっき見た、首もとにあるほくろにも忘れずにキスをする。
「ここにほくろがあるんだね」
「セックスの最中に無駄口叩くぐらい余裕があるんだったら心配ないね」
 暗闇に慣れた目で見た彼女の顔は、いつもよりも数倍美しく、笑みを湛えている。あいつと、富樫とする時にもこうして、笑みを浮かべていたのだろうか。振り払いたくても振り払えない思考が頭に留まる。このままじゃいけないと足掻き、彼女にキスをして頭の中を彼女の事で飽和させた。
 それからは無我夢中で、彼女を満足させ、勿論俺も満足をすると、そのまま座布団に突っ伏して眠ってしまったらしい。
 翌朝、薄ら寒さに目を開けると、裸のままの曽根ちゃんが隣で寝息を立てていた。肩のあたりにはまだ薄らと黄色く変色した痣が残っている。他はほくろ以外の余計な物が一切ない、真っ白な肌だ。だから余計にこの痣が、邪魔だった。


おぼろげに輝くの最初へ おぼろげに輝く 11 おぼろげに輝く 13 おぼろげに輝くの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前