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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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fainal2/2-40

(外野フライでいいんだ……)

 直也は、そう自分に言い利かせてネクストを出ようとした。すると、沖浜中ベンチから伝令が出た。

(なんだ?)

 これ以上の失点は絶対に許されない──そう考えた沖浜中の指揮官は、再びピッチャーを交替させた。
 背番号十六はマウンドを去りベンチに退いていく。

「また戻すんだ」
「結局、アウト四つ分か。この回入れて残り三回、充分潰せるな」

 青葉中の選手たちは、むしろ、このピッチャー交替を喜んでいる。

「バッターラップ!」

 直也が右打席に入る。地面を掻いて軸足である右足を固めると、ゆっくりとバットを構えた。グリップの位置を目一杯長く握っている。
 初球は外角へのボール球。キャッチャーが、様子を見にきたのだろう。直也は振る気配もなく見送った。

(少し、球のキレが良くなったようだな)

 直也の方も、ピッチャーの回復具合を見定める。休んだ効果はあるようだ。
 ニ球目も外角への真っ直ぐだが、初球より内に入ってきた。

 ──キンッ!

 直也は思い切りバットを振り抜いた。が、打球は右に逸れてスタンドに飛び込んだ。

(次は内角か……)

 しかし、解みとは違って外角へのスライダーを投じてきた。
 直也は反応しそうになる身体をすんでのところで止めた。
 四球目を外角のカーブ、五球目を外角の真っ直ぐと、今までと違う執拗な外角攻めは直也の思考を狂わせようとする。
 しかし直也は、最後は必ず内角に攻めてくると疑わない。

 そして迎えた七球目。キャッチャーはついに、内角のカットボールを要求した。
 ピッチャーも大きく頷き、腹を据えた。

 セットポジションの構えから左足が上がった。直也はバットのグリップを絞り、体重を軸足に掛けて目を凝らす。
 ピッチャーの左足が六歩半前方の窪みを掴み、右腕を振り出した。直也は、左足をステップしてバットを振る体勢になった。

 ──ビュッ!

 力感を感じさせないフォームからの右腕の振り。それでいて指先を離れたボールは、予測よりも伸びてくる。

 内角の真ん中──待っていたボールだ。
 今まさにバットを振り出そうとした瞬間、

「な、なんだ?あいつ」

 直也は、その体勢のまま固まったようになって、バットを振らなかった。

「ストライク、スリーッ!」

 おぼつかない足取りでベンチに引き上げて来る。そんな様子を見た仲間は、ただならぬ思いを抱いた。

「どうしたんだよ!?見逃すなんて」

 直也が見せた信じられない行動を仲間は言及するが、本人は「狙いが外れた」とだけいって多くを語ろうとしない。
 そんな様子を見た佳代は気づいていた。あの瞬間、直也は正常ではなかったのだと。

 佳代は直也に近づいた。ちょうど仲間逹から離れた場所に腰掛け、ヘルメットと手袋を脱いでいる。


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