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出陣の日に
【悲恋 恋愛小説】

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出陣の日に-1

1868年、会津(福島県会津若松)。この時代、徳川幕府を倒幕する西軍と会津藩率いる徳川軍が争い、遂に西軍は本拠地である会津藩に攻め入ろうとしていた。会津軍は兵が足りず、少年のみで編成された部隊を作る。―それが、後に会津戦争の悲劇の象徴と言われる白虎隊である…。

6月。下級武士の娘、お美津は今年で15の年になる。日に日に怪我を負った兵が城の方へ運ばれて行くのを、心配に思っていた。
『戦が…激戦になれば―。儀三郎様も出陣してしまう…』
お美津は、後の白虎隊士の儀三郎が好きだった。しかし、儀三郎とお美津は身分が違い、願いなど叶う訳が無い。それでも、彼が日新館(上級武士が通う学舎)に通う姿を見かけたりすると、お美津は心が躍った。

そんなある日、お美津は家の使いで城下町を歩いていると、反対側から儀三郎と少年達が歩いてきた。儀三郎を見つけると、お美津の顔が熱り、足取りが遅くなる。「ぎ、儀三郎様…」段々と少年達はお美津の方へ近付いてくる。お美津は気付いていなかったが、早馬が迫ろうとしていた。「退け!」馬に乗っていた男が叫んだ声に、お美津はやっと気付いた。「きゃ!」「危ない!」その瞬間儀三郎は、お美津の体をぎゅっと抱き締め、地面に転がり出る。二人は泥だらけになった。「大丈夫か!?」「あ、はい…。ぎ、儀三郎様―!」目の前に儀三郎がいるのでお美津の鼓動が高鳴る。「ノロスケ…今度から、気を付けろよ。」儀三郎はお美津をからかったのか、お美津の頬に付いていた泥を手で拭き取るとニッコリと笑った。「えっ…」儀三郎は、すっと立ち上がると少年達と共に行ってしまった。実は儀三郎は、お美津が初恋の相手で、お美津と同じ思いであったのだ。15歳になり、娘らしくなったお美津をまた好意に感じていた。

二ヶ月後、8月。遂に白虎隊に明日、出陣の命令が下された。白虎隊士達は闘気がみなぎっていたが、お美津は愕然となった。瞳には大粒の涙が溜る。「儀三郎様ぁ…嫌―嫌!行かないで…」会津軍は不利な立場、出陣するとは死を意味していた…。
次の日の朝―。縁側に茫然と座っていたお美津。そんな時、儀三郎の声が響いた。
「お美津!お美津!いるんだろう!」
「ぎ、さぶ、ろうさま…!」
軍装をし、刀を差した儀三郎は凛々しく見えた。「…格好で分かるだろ…俺は」「もう…言わないで…」お美津は下を向く。「出来るなら…共に…結ばれとうございました…でも…」お美津が本当の思いを打ち明ける。「―ずっと、お美津が…好きだった」「儀三郎様…儀三郎様ぁ!私も…ずっと…」お美津は泣きじゃくり、儀三郎の胸に飛込んだ。
「身分が違くても…俺の妻は…お美津だけだ…」「儀三郎さまぁ…」儀三郎は、お美津の顔を寄せ、唇を重ね合った。すると、儀三郎は何も言わずに走り去ってしまった。
この1日後の夕方には、白虎隊は自決している…。

恋も自由に出来る世の中になった今。 時代の流れに散っていった悲恋、アナタはその辛さを想像出来ますか?


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