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「白い部屋」
【その他 官能小説】

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「白い部屋」-1

しんとした部屋の中で、彼女は佇む。スプリングのきいたベッドの上で、俺は煙草を吸いながら彼女を見つめた。視線を避けるような彼女のうつむいた横顔が、ベッドサイドの小さな灯りによって浮かび上がる。
白い煙草の煙が部屋の中にゆっくりと漂い、霧のように霞んだ。その中を纏うように彼女は進んで、ベッドの端に腰掛ける。白いベッドは、彼女を引き寄せた俺の動きで、波のように揺れた。
彼女を抱いたまま煙草を吸う俺を見上げていた彼女は、細い腕を伸ばし、俺の手からそっと煙草を取りあげる。そのまま彼女はゆっくりとその煙草を吸った。魅惑的な唇から、白い煙が静かに立ち上る。一口、二口吸い込んだ後、サイドテーブルの上の灰皿でその火は消された。
煙草が微かに香る中、彼女は俺にくちづける。柔らかな舌が俺を探り、絡み付けられたそれは、俺と同じ味だった。
唇と、熱い舌が俺を求めている。柔らかな彼女の舌を捕え、深く吸った。吐息が散る。
一旦唇を離し、見上げる俺に彼女は微笑み俺にのしかかると、そのままゆっくりと服を脱いだ。鎖骨の浮いた白い肌が露になる。肌に触れようと伸ばした俺の腕は、彼女の手で遮られ押さえ付けられた。
シャツのボタンが静かに外されていく。そのまま忍び込んだ彼女の手の熱さを感じ、俺の中の欲望がゆっくりと熱を持ち始めた。
俺の裸の胸に細い指がゆっくりと滑っていく。瞳を伏せた彼女が、指の辿る後をなぞるように唇を付けた。
熱い息が肌にかかり、次第に速さを増す鼓動は、彼女に気付かれるだろうか。見つめる俺に彼女は顔を上げて微笑む。それはとても淫らで、美しかった。
唇と、舌と、肌に触れる髪の感触が下降していき、俺を捉える。温かい舌がそれに触れ、彼女の唇に包まれる。その熱さに、俺は思わず深いため息をついた。
俺を口に含む彼女に手を伸ばし、その顔を上げさせる。不服そうな彼女を白いシーツに沈め、覆い被さると、乱れた長い髪に見え隠れする小さな耳に舌を伸ばした。
複雑な曲線を確かめるようになぞると、俺の体の下で彼女が身をくねらせる。白い首筋に押し付けた唇に、彼女の温もりを感じると、そこに赤い痕を残す。鮮やかな赤い色。
そのまま、柔らかな胸を手のひらに包みこみ、その先端を口に含んだ。俺の舌で硬さを増すそれは小さな果実の様で、俺は軽く歯を立てる。いきなりの刺激で、彼女の躰は大きくベッドの上で跳ねた。
左手で包まれた胸の下で、彼女の鼓動が大きくなる。俺の手の動きそのままに、彼女の胸は柔らかく形を変え、その胸の上を舌が滑る度に、彼女の甘い声が洩れた。その声に誘われ、俺は愛撫を強くする。
吐き出される息、震える声、触れる肌、何もかもが熱くて、次第に俺は彼女に溺れていく。
浅い息をする彼女を見つめて、ゆっくりと指を忍ばせる。彼女の中は溶けそうな程に熱くぬかるみ、俺の指を濡らした。探る指の動きに合わせ、開いた唇から甘い声が洩れる。
差し入れた指の場所を確かめるように舌でなぞると、彼女の躰が小刻みに痙攣する。次第に大きく震える躰に、愛撫を強くした。彼女の声が部屋に、俺の耳に、反響する。
弓なりに反らされた美しい曲線が、俺の目の前でゆっくりと沈んだ。
瞳を閉じた彼女の頬にくちづけると、僅かに開かれた足を大きく広げた。ぐったりと、なすがままの彼女に押し当てた熱い塊を、一息に挿し入れる。収縮するように包まれた溶けそうな感覚に、俺は思わず溜め息を吐く。
ゆっくりとした動きは次第に速さを増していき、彼女の躰を揺らしていく。何度も高みを越え、快楽に歪む彼女の顔を見つめながら。
彼女が潤んだ瞳を向けて、俺をせがむ。彼女の要望そのままに、俺は欲望の塊を彼女の胎内へ吐き出した。


彼女がゆっくりと服を身に着けていく。つい先程の行為など、夢見ていたかの様に。
乱れた髪を指でかきわけ、俺に小さくくちづけると、彼女は部屋のドアを開けた。
「ねえ」
声を掛けられ、彼女は振り向く。
「俺を愛している?」
俺の問いに、彼女はじっと俺を見つめた。
「あなたは?」
彼女の声が部屋に響く。音もなく、ドアは閉められた。
煙草を吸いながら、空を見つめる。またこの白い部屋で、俺は彼女を待つだろう。

〈了〉


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