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『BLUE』
【スポーツ その他小説】

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『BLUE』-14

深間が去った後はさすがに少年達も反省したのか涼生に文句を言ってくることもなかった。
タケルはまだ納得していないのか涼生に謝ることもせず、他の仲間から外れて彼の隣で不愉快そうな顔をあらわにしている。

「なぁ、ちょっといいかな?」

タケルの背中に話し掛けても反応はなかった。

「聞きたいことがあるんだけど・・・」

「・・・・・・」

「ダメか・・・」

仕方なく話し掛けるのを諦めたとき、タケルが再びこちらに顔を向けた。

「なに?兄ちゃんまだ居たの。」

「まぁ、そんなこと言わずに兄ちゃんの話を聞いてくれよ。」

「・・・別にいいけど。聞きたい事って?」

「さっきの人、深間君だっけ。彼、ここの職員じゃないよな?
俺と同じくらいの歳みたいだし」

深間の名前を出すとタケルは明らかに動揺した。

涼生にとっては深間はどうにも気になる存在だった。清新で水泳をやってるということもそうだったが、何より彼と水原の関係が微妙だ。
さっき深間は彼女を奏子と親しげに呼んでいた。
涼生は自分でも意識していなかったが、ひどく焦っていた。
タケルは手に持ったキャップをいじりながらしばらく考えていたが、やがて手を休めて涼生に言った。

「深兄は特別だから。」

「特別?」

うん、と頷くタケル。

「深兄はバイトなんだけど、昔は俺みたいにこのジムに通ってたんだ。
ここのスイミングクラブは指導環境がすごく良くて、全国的にもハイレベルな選手をたくさん輩出してるってウチの親が聞いて、俺も三歳の時からずっとここで泳いでる。
兄ちゃんがどれだけ速いか知らないけど、深兄と競おうなんて思わないほうがいいよ。」

涼生は思わず喉を鳴らした。此処ってそんなに凄い場所だったのか・・・
今更ながら場違いな自分を感じる。

「深間君って自由形だよな。そんなに速いのか?」

「速いも何も、去年のオリンピック候補選手だよ。深兄は。」

「なっ・・・!?」

「このジム出身の五輪選手は結構いるけど、深兄ほど早い時期に注目された人は俺は知らない。」

涼生はTVや新聞を全く見ないので分からないが、聞けば地元じゃかなり有名な選手らしい。

「深兄は去年からここで指導員みたいな仕事してるけど、コレも特例で館長が深兄に頼んでやってもらってるんだ。
だから深兄がアンタを認めるなら皆も俺もなにも言わない。」

そこまで聞いて涼生は肩を落とした。
今の彼と自分の間にある差を嫌という程感じた。とは言っても高校から水泳を始めた涼生じゃ同じスタートにすら立ててないだろう。典型的な負け組ってヤツだ。情けないと分かっていたが自分のなかの嫉妬を否定することはできなかった。


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