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勝利の女神は側にいる
【その他 官能小説】

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勝利の女神は側にいる-4

−ホールを出て、駅の方に向かった。その間、専務は口を開かなかった。
『あの…
どこに行くんですか?』
『イイから付いてきな。』
どこに行くのか分からないまま、専務の後を追った。
駅を過ぎ、10分程歩いたとこで立ち止まる。一軒のバーの前。
[ボールパーク]
どうやら、専務の行きつけの店らしい。
…カランカランッ!
『いらっしゃいませっ!』
『よぉっ!リンっ!!』
『あっ!明人さん、ご無沙汰ですっ!』
店員さんの元気な声が響く。
『リン、こいつ、ウチの元社員で史彦ってんだ。最近、クビになったんだよ。』
凄い紹介の仕方…
少しは僕の気持ちも察して欲しいのに…
『あ…は、初めまして…』
気を取り直して挨拶する。人見知りするタイプの僕。少し、緊張気味に会釈した。
『いらっしゃいませ。店長のリンです。』
『私がココのNo.1店員の美樹ですっ!』
笑顔で自己紹介してくれた二人。そして、僕達をテーブル席に案内してくれた。
『ビールでイイか?』
『あっ、はいっ。』
メニューを見ながら、おつまみを選ぶ専務。そうしてるウチに、ビールが運ばれてきた。
『じゃ、お疲れっ!』
『おっ、お疲れさまですっ!』
…カキンッ!
形式的な乾杯。そのまま一口飲む。専務は一気に半分ほど空けた。
『なあ、史彦…』
専務がゆっくりとした口調で話し始めた。
『はいっ、専務。』
『明人でイイぞ。今はプライベートだから。』
『あっ、分かりました。専…明人さん。』
明人さん。そう呼んだのは初めてだった。今まで、こうやって顔を合わせて飲んだ事などなかった。
正直な話、社長より明人さんの方が僕にとっては恐いイメージがあったからだ。
緊張でノドが乾いた。ジョッキを口に運ぶ。
『お待たせしましたっ!枝豆と野菜スティックになりますっ!』
『おっ、サンキュー。』
『ところで史彦さん。このお店はどうですか?』
美樹さんが僕に、笑顔で話し掛けた。店員さんもイイ感じだし、店の雰囲気も落ち着いてて、気楽に飲める。そんな第一印象だ。
僕がそう言おうと思った時、明人さんが口を開いた。
『美樹ちゃん。悪いけどこれから大事な話をするんだ。こっちから呼ぶまで、このテーブルには来ないでくれ。』
『えっ…!?わ、分かりました…』
明人さんがそう言うと、少し寂しそうな顔をして美樹さんがカウンターに戻った。
『彼女、イイ子なんだけどさぁ、場の空気を読めない時あるからなぁ。』
笑いながら話す明人さん。しかし次の瞬間、その表情は真剣なモノに変わった。
『ところでお前、何で和哉に怒られたのか分かったか?』
『は…はい…勤務をサボって、パチンコ屋なんかにいたからだと思います…』
重苦しい沈黙。このテーブルだけ、違う空気が漂っている。
『ハズレ。』
『は…!?』
『やっぱ、俺の思った通りだ。和哉に言ったんだよ。史彦は理解してないぞ、ってね。こんな時だけだよ。俺の予想が的中するのは。』
間違っていた…
一体何が違うのか、何が分かってないのか。僕には不思議だった。
『イイか、一回しか言わねぇからな。お前の何が間違ってたのか。それは、下らない言い訳とペナルティーの話だ。』
『ペナルティー…?』
『「暑かったから」って言い訳はともかく…』
ジョッキを置く明人さん。そして、視線が一段と厳しくなった。
『お前、和哉に向かって減給とかクビとか言い放ったらしいな。』
『は、はい…でもそれは、僕なりの反省の表れで…』
『じゃ聞くが、罰さえ受ければ何してもイイのか?』
『あ…』
『逆転の発想だ。確かに、勤務をサボって遊んでたってのは許される事じゃない。しかしなぁ、最も許されない行為、それはお前の安易な考え方なんだよ。』
無言。言い返す言葉もない。明人さんの言ってる事の意味が充分に理解出来る。だからこそ、反論なんか出来っこない。
『罰ってのはなぁ、あくまでも抑止力なんだ。人間は、大なり小なり過ちを犯す可能性がある。』
目を逸らす事なく話し続ける明人さん。僕もじっと聞き入った。
『けどな、問題はその後だ。二度と同じ過ちを繰り返さない、その気持ちが一番大切な事なんだ。』
今、全てを理解した。社長の怒り。それは僕の甘い考え方に対してへの戒めだったのだ。


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