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夜半の月
【歴史物 官能小説】

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夜半の月-7

「あの女は、男を腑抜けにするな。和歌の才は類稀だが……式部は、腑抜けにされた俺を見てみたいと申すのか?」
「そのような事は……ただ、わたしよりは適役だと考えただけです」
「俺は、お前に相手をして欲しいのだ。嫌か?」
「……困ります」
「悪いが、今の俺に命令出来る人間はこの国にはおらん。誰にも命令されたくなかったから、したくもないことをやり続けてきたのだ」

 道長は悪びれずにそう言うと、わたしの肩を抱き寄せて囁いた。

「お前は、俺のことが嫌いか?」
「……」

 質問に答えないわたしを見て、道長は少し笑った。
 わたしは道長のことが嫌いだった。
 正確に言うと、権力者というものが嫌いなのかもしれない。
 父も権力者が変わる度に、登用されては左遷されて、悩む姿をわたしは見てきたのだ。
 わたしはそういう相手には関わらず静かに暮らそうと思っていたが、どういうめぐり合わせか、道長のような男に目をかけられてしまった。
 道長は鋭い男である。わたしの気持ちなど、お見通しのはずだった。
 
「フフ、俺はお前の、正直な所が好きなのだ」

 そういう道長に、わたしは抱きしめられた。
 おやめください、そう言おうと思ったが、何故か言葉に出せなかった。
 彼が権力者だから怖かったのだろうか。それとも――
 
 ひと月前の事を、ふと思い出した。思い出して、体が熱くなる。
 あの時は、男に抱かれることなど久しぶりで、途中で気を失ってしまったらしい。
 男のものを受け入れること無く、代わりをさとが務めたという。
 そのさとが、おずおずと、また布団を準備していた。道長に抱きしめられながら、さとと一瞬目が合う。
 さとは、無表情に見えて、微妙な目線でわたしを見つめていた。
 わたしは……さとに、嫉妬されている? そういう目線に見えた。
 何故、わたしをそんな目で見るの? 

 そう思った瞬間、道長に口を吸われ、袿の下の肌に触れられた。
 ぞくりと、体に震えが走る。瞬く間に、体が道長を受け入れるよう反応してしまう。
 こんな男なんて、わたしは好きじゃないのに……。
 光源氏とも、前の夫とも、全く似ていない男だ。なのにどうしてこんな……。
 口の中で道長の舌が蠢いている。そして、彼の手がわたしの乳房に触れると、思わずわたしは道長を抱きしめてしまった。


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