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雑踏の片隅で
【その他 官能小説】

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パンドラの匣-1

 見覚えのない制服だった。
 その制服を着た、高校生と思しきショートカットの少女が佇んでいた。
 少女は、小動物のような瞳を眠そうにして、何を見るでもなく石像のように立ち尽くしている。
 一瞬、声をかけようとしたが、止めた。
 高校生だから、というのもあったが、何故かその少女に足が向かおうとしなかった。
 
 だから俺は、他の遊び慣れた風に見える女に次々と声をかけていた。
 何人かに無視され、何人かとは多少話をしたが、それで終わった。
 その後に、さらに女を捕まえて、昼食に誘った。
 話は盛り上がったかに思えたが、女も遊び慣れているのか、俺があしらわれて終わる。
 アドレスも渡してはみたが、これは脈が薄いだろう。
 要するに、今日は不発で、飯を奢っただけの一日だ。

 今ひとつ調子が悪いので、気分転換にあまりやらないパチンコでもやろうかと思った。
 最近のパチンコは難しい。
 規制があるのかほとんど大当たりのような事はないし、何かややこしい法則や攻略法を知っておかないと、まず勝てないように出来ている。
 それだと客が減るので、相場を下げて安くで長く遊べるような店が増えている。
 パチンコの儲けで暮らしていくというのは、将来的には出来なくなるのかもしれない。
 もっとも、本格的にやらない俺にとってはどうでもいい話だ。
 
 そんなどこかで聞きかじったことを考えながら、打ち出されていく銀玉の行方を見つめていると、機械から景気のいい音が聞こえ出した。
 どうやら、何かのリーチ状態になっているらしい。
 俺は今打っているパチンコの仕組みなどは知らない。どうなればいいのかも分からない。
 適当に続けていると、さらに賑やかな音声が出て、店員が俺の所に駆けつけた。
 店員が俺に、おめでとうございます、などと言ってきて箱を用意し始めた。
 ナンパは失敗したが、その運がこちらに回ってきたのか。
 あまり興味は無かったが、貰えるものは貰っておくのが俺の性分だ。
 しばらく続けて、俺は出玉を回収して、精算をした。

 気分転換のはずのパチンコに意外なほど時間を費やし、辺りは薄暗くなっていた。
 俺は今しがたのあぶく銭を手に、また女を漁ってみようか、などと思っていたのだが――


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