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Childish
【サイコ その他小説】

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Childish-1

・2月13日pm6:00

……雨が降っている。
「…………」
森の中……一人の女性がカッパを着て、スコップで穴を掘っている。
その穴は成人男性の身長の半分ぐらいしかなく、深さも浅い。
「…………」
女性は自分の隣に置いてある、ビニールシートに包まっている『何か』をその穴へ放り込んだ…………


・2月13日am7:00

夢を見ている。
お父さんとお母さんと一緒にピクニックに行く夢。
母さんはこの日の為に豪華なお弁当を作って持ってきた。
父さんとは2週間ぶりに会えた。
レジャーシートの上で3人、仲良くお弁当を食べている。
その、帰り父さんが運転している車に軽自動車が……
ハッと目が覚める。
またこの夢を見た。見てもどうしょうもない夢母さんが只の肉片になった車内……思い出すだけで吐き気がする。
僕は『あいつ』が嫌いだ。『あいつ』は父さんが居ると居ないとでは人が変わる。
父さんが居ない時は『あいつ』は僕を罵倒する。この頃は普通に手を出してくる。
父さんが再婚したのが2年前、一人目の母さんが死んでから1年後の事だった。
その時から違和感は会った。
『あいつ』は初めて僕を見た時、父さんにわからない様に僕を睨んだ。まるで『ゴミ』を見るような目で僕を見ていた。
「…………」
布団の横にある時計を見てみる。
「よいしょ……痛っ!」
起き上がると昨日、『あいつ』に殴られたお腹が痛みだした。僕の顔には傷はない、傷があるのは全部服の下だ。
多分、父さんにばれないようにしているんだろう。
パジャマから幼稚園の制服に着替え、部屋の襖を開ける。
リビングには誰も居ない、父さんは仕事の都合で出張している。『あいつ』は多分、部屋で寝ているんだろう。
パンをトースターに入れ。冷蔵庫から牛乳を出す。牛乳をコップに注ぎパンが焼けるのを待つ。
パンを合計二枚食べ、1人で幼稚園へ迎う。
……今日は、頭から牛乳をかけられなくて良かった……


・2月13日pm4:21

「あはははははははっ」
百合(ゆり)は笑いながらリビングの惨劇を見ている。
7歳くらいだろうか?子供が俯せになって倒れている。
「あははっ、やっちゃった」
子供の背中からは刃渡り15センチ程の包丁が刺さっている。
簡単だった。後ろから刺したら死んだ。
「きゃははははは」
百合は耐えきれなくなり腹を抱えて、テーブルをバンバンと叩いた。
愉快で仕方ない、楽しくてしょうがない、今にもイッてしまいそうだ。
「ふーっ……ふーっ」
どうにか、笑いを止め俯せになっている子供の前で屈みこみ、背中に刺さっている。包丁を一気に引き抜く。
百合は血の付いた包丁をキッチンに持っていき水で洗い流し始めた。
「うふふふっ」
血が水と混ざり合いながら流れていくのを百合は微笑しながら眺めていた。
包丁を置き場に戻し、椅子に腰掛ける。
右手を顔に当てて、これからこの『荷物』を何処に捨てに行くか考えていた。
顔は終始、笑顔だった


・2月13日pm3:45

帰り道、恐怖が心を喰いむしる。
帰ればまた殴られる。
意味も無く殴られる。
「痛いんだろうな……」
だが幼稚園生の自分でもわかる。
『逃げられない』
逃げ道なんて無い、父さんに言っても信じてくれなかった。逆に言ったことが『あいつ』にばれて父さんが出勤した後に一日中…………ウッ
僕は急に来た吐き気を抑えるために左手で口を覆った。
すっぱい物が口の中に広がる。力の限り喉に力を入れ、胃に戻す。
「はぁ――はぁ」
死ぬかもしれない、そんな予感がよぎる。
足が重い、家に帰りたくない……遠くに、そう『あいつ』の居ない、どこか遠くに僕は行きたい。
それでも、僕の身体は一歩、一歩着実にあの家に向かっている。


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