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【サスペンス 推理小説】

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エスカレートする嫌がらせ-3

 その翌週あたりから、ヨネコさんの憔悴具合はすさまじかった。ほとんど食事も食べられなくなったようで、さらに頬がこけ、顔色も悪く、まるで重病人のように見えた。我が家で出すお菓子にも食事にも、とうとう手をつけなくなった。むしろそれでも我が家に来ることだけは止めないのが不思議だった。

「ヨネコさん、大丈夫ですか? ちょっとヤバくないですか?」

「だって……みんなひどいんだもん……」

 ヨネコさんはささくれ立った畳の上に突っ伏してわあわあと泣いた。九官鳥とウシガエルが我が家に来た日、それをヨネコさんに伝えた。九官鳥が延々と垂れ流した悪口もすべて伝えた。するとヨネコさんは、その日のうちに九官鳥とウシガエルに怒りのメッセージを送りつけたらしい。で、それが仲間内に広まって、気がついたらヨネコさんとサイト内でフレンドだった人たち全員からフレンドを解除され、ひとりぼっちになってしまったという。

「ひどいよ、みんなマリアちゃんとシオンちゃんの話しか聞かないで……ワタシだけ悪者にして……もとはといえば、ワタシが一番の被害者なのに!」

「はあ」

「それに、これ見てよ……」

 それは白いコピー用紙に新聞の切り抜きを貼り付けて作られた文章で、今朝、ヨネコさん宅の玄関ポストに入っていたという。文面は『綾小路可憐はひとでなし』『ブサイクババア死ね』『生まれてきたことを詫びろ』というようなもので、全部で10枚ほどが乱雑に突っ込まれていたらしい。

「誰かがワタシの家まで来たのよ! なんで!? どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの!?」

「まあ、悪戯ですし、気にしない方が……っていうか、住所って小説サイトのひとたちに教えたんですか?」

「教えたよ、だってオフ会の写真送ってくれるっていうんだもん」

「ああ……でもちょっと不用心すぎませんか? ほとんど見ず知らずのひとに住所とか教えちゃうっていうのは……」

「なんでワタシばっかり責められるの、うわああああん」

「あー、だから、もう前から言ってるみたいにやめちゃえばいいじゃないですか、そのサイト。時間が余ってしょうがないんならバイトでもなんでもすればいいし」

 ヨネコさんはキッと顔をあげてわたしを睨んだ。

「嫌よ! いま辞めちゃったら、なんだかワタシが逃げたみたいになっちゃうじゃない。悪いことしてないもん。意地でも辞めないもん。それに時間が余ってしょうがないって、何よ。モモちゃんはアレでしょ? ワタシが働きに出れば、もうここに来る時間もなくなってスッキリすると思ってるんでしょ? そうはいかないわよ、子供もいないくせに、アンタだけのんびり暮らすなんて許せない! ずるい!」


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