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堕ちた天使の夜想曲
【ファンタジー 官能小説】

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 恩人に恩返し-3

 廊下の見事な天井画を見上げながら、カテリナは小さくため息をつく。

 ルーファス・d・ランベルティーニ公爵は、普段はきっちりとした大人だし、むしろ標準よりもずっと上等のふるまいができる。
 剣技も卓越しており、戦場に赴けば一万騎の自軍を見事にまとめ上げる勇将だそうだ。
 しかし、変なところで子どもっぽい。
 まだ短い付き合いながら、何度こんな風にかわかわれた事か……


「カテリナさま」

 この二ヶ月で、本当の名前のようにしっくり馴染んだ名を静かに呼ばれ、カテリナはもの思いから覚めた。
 銀器の茶道具を乗せた盆を手に、リドが立っていた。

「当主さまは、お目覚めでしょうか?」
「は、はい!」

 リドの妨げをしていた事にきづき、慌てて扉の前からどく。

「あの……リドさん……」


 自分の身の振り方について、先ほどルーファスが言った事を尋ねてみたが(もちろん、後半の茶化しは抜きにして)、若い執事も同意見らしい。

「当主様の判断は、ごもっともと思います」

 ルーファスよりも、格段に冷ややかな返答がかえってきた。

「退屈で困るというのでしたら、話し相手のご婦人でも用意いたします」
「い、いいえっ!けっこうです!」

 これ以上、さらに借りを作るなど恐ろしすぎる!
 カテリナは両手を振って全身で断った。

「では、刺繍か読書でもなさっていてください」

 話は以上だと言外に漂わせ、ピシャリとリドは打ち切った。
 しかし、主の扉をノックする手を寸前で止め、ポーカーフェイスの鬼執事は、少しだけ愉快そうに口元を緩ませた。

「それでも、貴女がいらっしゃってから、私は朝が少し楽になりましたよ」
「え?」


「当主さまは、貴女に起こしてもらいたいばかりに、早朝に城を抜け出す悪癖を、お止めになりましので」



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