盟約-5
「アツってば!」
「うをっ?!」
いい加減、我慢の限界だと薫子が俺の背中にのし掛かる。
「せっかく気持ちが通じた記念すべき日を、いじけて過ごすつもりか?!」
背中から文句を言う薫子……ぷうっと頬を膨らませて可愛い事この上ない。
「そうですね……じゃあ、お祝いしますか?」
振り向いた俺に、薫子ははち切れんばかりに尻尾を振って喜ぶ。
「買い物して、ご馳走作って……あ、その前に風呂入って……」
風呂という言葉を聞いた瞬間、薫子の耳と尻尾がピーンと立ち上がった。
おい、何を考えてんだ……淫乱マゾ女。
「……何、発情してんすか?」
「だって……アツ居なかったから1ヶ月シテない」
上目遣いで尻尾をパタパタ。
うっ、くそう可愛い。
俺は身を屈めて薫子に唇を寄せ、彼女は嬉しそうに唇をつきだして目を閉じた。
チュッと軽くキスをして薫子を抱上げる。
「きゃっ」
驚いた薫子がしがみつき、俺はそのままバスルームへ向かった。
「キレイに洗ってやるよ……中までな」
「ふふっ」
湯船にお湯を張りながらシャワーを浴びる為に服を脱いだ時、自分が傷だらけなのに気づいた。
「ありゃりゃ、結構あちこち切ってんな」
薫子に金縛りをかけられて枝を折りながら地面に落ちたからなあ……うわ、腕の傷深っ。
「す、すまん。私のせいだ」
独り言のつもりだったがバッチリ聞こえてた薫子が傷口に触れる。
「いっ、いや大丈夫。猿の時の怪我だから毛皮に守られてたし……」
自分で言っててまた落ち込みそうになった。
「ちょっと我慢してくれ」
顔を寄せた薫子は傷口に舌を這わす。
「いっ……?」
ビリビリした痛みがジクジクに変わり、次第に痛みが無くなる。
あ、聞いた事ある……犬神の治癒能力……確か舐めて癒すってやつ。