盟約-4
「妖怪とか神とか関係ない、アツが好き」
唇を離した薫子が少し笑う。
「俺、妖怪なんですけど?」
「関係ないと言った」
「大御神様は許してくれないんじゃ……?」
「元々欠陥神だしな、今更ひとつやふたつ欠陥が増えても変わらんだろう?」
薫子は苦笑いして俺の頬を両手で挟んだ。
「泣くな」
「えぇ?!」
うわっマジで泣いてるっ?!カッコ悪っ!
オタオタする俺の頬に唇を寄せた薫子は、その柔らかい唇で涙を拭う。
ああ……なんかもうカッコとかどうでもいいや……。
俺は薫子を抱き締めて唇を重ねた。
「好きです、薫子」
「私もだ、アツ」
気持ちを確かめ合って再び口づける。
妖怪の腕に自ら飛び込んできた神様……後悔なんかさせない。
コイツは俺の女神だ。
「あのさ……盛り上がってるとこ悪ぃんだけど」
またまた突然の今村登場。
お前な、少しは遠慮しろよ。
「高野……お前、いま猿だから」
え?
俺は改めて自分の姿を見る……全身を包む赤茶色の毛皮……同色の揺れる尻尾。
「のおぉぉおぉぉ!?」
俺の魂の悲鳴が森中に響き渡った事は言うまでもない。
「アツ〜?」
薫子が呼ぶ。
「ねえ、アツ?」
今、俺は薫子の部屋の隅で壁に向かって膝を抱えていじけていた。
いじけたくもなるっつうの……本来の姿とは言え、猿の格好でラブシーンだなんて……カッコなんてどうでもいいやとか思った後だったけど……カッコ悪ぃ……カッコ悪すぎるぜ、俺。
隠れ家の森から電車で帰ってる最中もどよんと落ち込み、呆れた今村は一度俺を小突いてから立ち去った。
あ、あいつにお礼言ってねえや……ま、いっか、明日学校で会うだろうし。