盟約-3
「違う……嫌いじゃないです……迷惑でもない」
「なら何故?」
「……俺は……妖怪だから……アンタは神様だし」
「だから何だ?」
うう……どうするよこの状況……。
沈黙してしまった俺を不安そうに見つめる薫子……。
腹、括るしかねえか?
「……好きなんです」
「?」
きょとんとする薫子が何か言う前に、畳み込むように言葉を続けた。
「そりゃ、初めはクソ生意気な欠陥神様って思ってましたけど……なんつうか、抱いてる時しっくりするっつうか、素直じゃない所も萌えるっつうか……その……だから……」
ああ、何言ってんだろ……支離滅裂、金縛りにあったままだしマジカッコ悪ぃ。
「薫子が好きです。薫子を俺だけのモノに……したいって……誰にも渡したくないって……そう思ったら、首締めてたっつうか……ホント……すんません」
「……確かに……お主がその手で私を殺したら、お主のモノになるな」
あう……そんな冷静にあっさり分析しないでくれよ。
「すんません……でも……望んでない……いやっ、アンタを俺のモノにしたいのは望んでる!そうじゃなくて……アンタを殺したくないんだ……」
もう滅茶苦茶だ……俺は右手を上げて自分の顔を隠す。
ん?動く?金縛り解けてる?
俺は左手を薫子に握られたまま、体を起こした。
「私は……アツに相応しい存在になりたい」
「え?」
「アツは人間が好きだから、もっと人間が知りたいと思った……アツが見ている世界を見たかった。今まで興味が持てなかった人間に興味が持てたのはアツのおかげ」
何だ?何を言ってんだ?
「人間を知れば知る程、分かってきた……アツに抱かれてる時の心地よさと充実感……今村に抱かれた時に感じた物足りなさ……生殖行為以外の何か……」
薫子は握っていた俺の左手に唇を押し当てた。
「それは、心……心だったんだな」
涙を流したまま微笑む薫子はとても綺麗で……俺は思わず彼女を抱き締めていた。
「アツの心は暖かい……アツの心が好き……アツが好き」
俺の背中に腕を回して擦り寄る薫子。
何だこれは?聞き間違いか?
「薫……っ?!」
聞き返そうと思って体を少し離した時、薫子が俺の口に自分の唇を重ねた。