盟約-12
《もし、また妖怪の本能が暴走したら?今度こそ止まらなくなったとしたら?》
う……それ言われるとキツイなあ。
「その時は……私が引導を渡しましょう」
薫子が俺の指を強く握りながら答える。
あ、それって最高に幸せかもしんねえ……愛する女の手にかかって死ねるって男冥利につきるよな。
思わず彼女の手を持ち上げて、その手にキスをしてしまった。
《控えんか、馬鹿猿》
パシッ
「って」
俺の手に軽い電流が走り、慌てて薫子の手を離す。
だあら、馬か鹿か猿かどれかひとつにしぼれっての。
俺は電流の走った手を振って憮然とした顔になった。
そんな俺を無視して大御神様は話を続ける。
《では、我が愛し子に神通力を戻そう》
大御神様である白いモヤが揺らいだかと思ったら、その一部が切り離されて薫子へと移動した。
薫子の胸に白いモヤが吸い込まれ、薫子の体が光輝く。
光が治まると、そこには白い毛皮の神々しい姿の犬神様……薫子の本来の姿。
犬でもヤれそうなぐらい綺麗だ……思わずうっとりと見とれてしまった。
《さて……せっかくの下界だ。暫く厄介になるぞ》
は?今なんつった?
ボケッと薫子に見惚れていた俺はハッと我に返り、大御神様に視線を移した。
大御神様の白いモヤモヤが人の形をとり、徐々にしっかりした人間へと変化する。
そこに現れたのは薫子を40歳ぐらいにした女性……しかも裸。
不覚にも息子が反応しちまったぜ、チクショウ……つうか、大御神様って女だったんだ。
《大御神様?》
薫子が呆気にとられて大御神様を見つめる。