盟約-11
《おい》
あ゛?
《起きんか》
んだあ?誰だ?
頭に直接語りかけるようなこれは……念話か?
《起きろと言っておる!この、ヤリチン猿と淫乱雌犬が!》
「っんえ゛っ?!」
「きゃうんっ」
念話による怒号に驚いた俺はガバッと体を起こし、反動で薫子から肉棒がズルリと抜けて薫子は妙な悲鳴をあげた。
「あっすんません」
「はうぅ」
ありゃりゃ、ヒクヒクしちゃって……もしかして感じたワケ?可愛いんだから、もう。
《無視をするな、エテ公》
つうか誰?
部屋を見渡すと真ん中のテーブル辺りに白いもやもや。
丸だったり人っぽかったり、形が定まらないそれから念話が発せられているようだ。
「なに?あんた?」
目を細めてじーっと見ていたら、薫子が体を起こして白いモヤを見つけ、ビシッと固まった。
「お、大御神様?!」
はい?!この白いの?
《猿には見えんか……まあ、妖怪だしな》
カッチーン。
まあ、そうだけど?なんで神様ってのはこう第一印象が悪いかね。
「あ、あの……何故このような所に?」
《分からぬのか?》
「う」
心当たりありまくりな薫子は耳を伏せて小さく縮こまる。
《我は人間の事を学べと言ったはずじゃ。何故、こんな事になっておる?》
大御神様の問いかけに、薫子は背筋を正して耳もピンと立てた。
「この猿は私に人間の素晴らしさと、人間の快楽を教えてくれました」
この猿ってアンタな……しかも、快楽は余計だから。
《答えは出たのか?》
「人間は心次第で強くも弱くもなれます。私はその心の支えになりとうございます」
薫子は大御神様をしっかりと見据えて答える。
《この先どうするつもりじゃ?》
「人間の事をもっと知りたいです……それから、寂れた神社の復興を……」
《そうではない。猿の事じゃ》
あ、俺っすか。
「俺の事は俺が決めます。薫子…様の決める事じゃないっす」
《では、猿。我が愛し子を淫乱雌犬に仕立てあげた責任はどう取る?》
わあ、何か言葉が刺々しいなあ。
「責任っつうか……ずっと傍に居ますよ。こんな世間知らずな神様ほっとけないし」
《神の寿命は有って無いようなもの……永劫の時を我が愛し子と過ごすつもりか?》
「その永劫ってのが終わっても一緒に居るよ」
俺は薫子の手に自分の手を重ねる。
彼女は俺の指をキュッと握ってくれた。