海水欲-5
4人の予定を確認し、1週間後の土日に泊まりがけで行こうという事になった。
結構、急だが俺も一応部活があるし、今村もバイトがある。
泊まりがけで問題なのは加藤の親の了承をどう得るかなのだが、そこは女2人で解決した。
事前に薫子が加藤の家に行き、その礼儀正しい態度で好印象をもたせ『実は今、親の都合で1人暮らしをしている。たまに寂しくなる』などと話す。
『では、家に泊まりに来い』と誘われた所で素直に泊まり、清純さを装おって更に好印象をもたせる。
そして、絶大な信用を得た所で『今度は璃子ちゃんが家に来てね』と親の前で誘い、加藤が返事に困っているのを見た親が『行ってあげなさい』と自ら許可を出す。
そこですかさず『じゃあ、早速今度の土曜日に来ない?』と再び親の前で計画を立てて安心感を持たせる。
これで何の疑いもなく、親は快く娘を送り出すのだ。
「親の前で、という所がミソじゃ。人というのは隠そうとすると知りたがるものだからな」
薫子は得意げに尻尾を振りながら話す。
「お見事。ちゃんと人間のお勉強してるんですね」
「当たり前じゃ。その為に人間の世界に居る」
まあ、そうなんだけどさ……その為……その為だけかあ。
分かってても微妙にへこむなあ……いやいや、今は目先の野外プレイに集中、集中。
そんなワケで土曜日……中央駅の入口で待ち合わせをした俺達。
「お待たせ〜早く乗れ乗れ」
送迎スペースに車で乗り付けた俺を、今村と加藤がきょとんとして見ていた。
「どちら様?」
「はあ?」
何言ってんだあ?
「いきなり年をとったな、猿」
へ?ああ、そうか。
「ああ、わりい。俺、俺、高野だよ」
「高野?!」
「高野くん?!」
泊まりがけだと荷物が多いだろうからレンタカーを借りたのだ。
勿論、免許は取得済み……だいたい、25歳くらいの年齢設定で。
だから俺は今、新社会人ぐらいの外見になっている。