海水欲-4
「あっアツ?」
「すんません、猿なんで……また欲情しました……食っていいっすか?」
服の上から乳首を摘まんでくりくり捻る。
「はぁんっ」
「ああ……良い声です……犬神様……たまんねえっす」
俺はバスルームに薫子を押し込んで、壁に手をつかせた。
お尻を突き出した淫らなポーズで薫子は肩越しに俺を見る。
潤んだ瞳にパタパタと左右に揺れる尻尾。
「嬉しそうだな、おい?」
自分で襲いかかっておきながらちょっと呆れる。
この神様の性欲も相当なもんだ。
「早くぅ」
「くくっ……んじゃ遠慮なく……いただきます」
結局、その後も俺達の狂乱は続き……買い物に出たのは夕方だった。
「ホントに猿だな」
「猿だし、しょうがねえじゃん」
大型店でエアコンを注文し、明日取り付けに来てもらうように手配した俺達は、帰りに喫茶店『黒猫』に寄った。
ここは、俺の数少ない友人、今村 芳郎(イマムラ ヨシロウ)のバイト先。
今村は霊感少年で俺が妖怪だって気にしない変な奴。
今村にそう言うと、お前だって俺が霊感持ってても気にしねぇじゃん、だと。
そりゃ、妖怪に比べりゃ霊感少年なんて可愛いもんだからなあ。
そんなワケでコイツとの付き合いも4年になる。
そして、コイツの彼女、加藤 璃子(カトウ リコ)も霊感少女。
こっちは大して強くなく、どっちかと言うと聞こえるだけらしい。
2人共俺らが人外でも大して変わらない……こういうのが居るから人間は面白い。
「で?お前らの淫らな情事を俺に聞かせる為に来たのか?」
今村はカウンター越しでグラスを拭きながら聞いてきた。
「いや、それもあるが」
「あるんか」
「海行かねえか?」
今村のツッコミを無視した俺は本題に入る。
「海ぃ?」
「そ、海水浴」
さっき街を歩いている時、あちこちのショーウインドウに飾られている色とりどりの水着に興味を持った薫子。
彼女は山奥の神社に居たので海を見た事が無い。
水面が大きくさざめいている端の見えないでっかい湖だ、と説明したら行ってみたいと言い出した。
「お前ぇ……乾の水着姿見たいだけだろ?」
「お前だって加藤の見たいだろ?」
「見たいだけじゃねぇ……」
「ああ、勿論だ」
俺達はニヤリと笑い、窓辺の席に居るお互いの女に視線を移した。
「「野外プレイだ」」
視線は女達に注いだまま、俺達は拳をコツンと合わせたのであった。