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永久の香
【大人 恋愛小説】

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川の流れ-1

 年末は実家に帰り、実家で元旦を迎えた。
 元旦に届いた年賀状を回収し、すぐに新幹線で自宅に戻った。
 ポストには10数枚の年賀状が届いていた。

 昨晩、リンから『明日暇か?』とメールが着た。
 暇だと返すと『初詣、行くぞ』との事だった。
『寒いし面倒臭い』と返信すると『罰当たり。我慢しろ』と言われてしまった。
 私の「面倒くさい」発言により、私の家のそばにある神社に行く事になった。

 神社の前で、ダウンジャケットにマフラーを巻いて、亀の様に首も顔も埋めて立っていると、向こうからリンが歩いて来た。身体が上下する度に、黒いしなやかな髪がふんわりと揺れる。
「明けましておめでとう」
「明けましておめでとさん」
 寒いからちゃっちゃと終わらせよう、と言うとまた「罰当たり」と言われた。
 お参りを済ませ(2人とも何を願掛けしたかは内緒にした)、裏門から道に出た。
 そこから見える土間川は、盆も正月も無いよと言った感じで通常通り、ただ流れている。「ちょっと今日、流れるのやめてみようかな」とか思わないのかな。

「今年こそ彼女ときっちり、別れるつもりだ、俺」
 急にそんな事を言い出すので、ダウンに突っ込んでいた片手をリンのおでこにピタと付けて「どうした?」と顔を覗き込んだ。熱がある訳ではなさそうだ。
「もう1年は経つんだ、別れ話を始めてから。いい加減しんどくなってきた。お前との関係も深まったしな」
 うん、と先を促した。暫く無言のまま歩いていたが、再び彼は口を開いた。
「暫く、お前の名前を出して旅行だのクリスマスだので避けてきたんだけどな、今月久しぶりに会うんだ」
「そうなんだ――」
 複雑な心境だった。会って欲しくない。そのまま放っておけばいいじゃないか。そんな風に思う。
 しかし責任感の強いリンが、「死にたくなる」というような事を口にする、親もいない孤独な彼女を放っておくはずも無く。
 「私だけを見て」という我が儘が通用しないのに、リンには「俺の美奈でいてくれ」と言われた。こんなのフェアじゃない。
 少しの優越感に浸っていた筈の私が、リンに捨てられるんじゃないかと言う大きな不安を抱いている。
 優越感の後に出る不安。元夫に浮気をされた事を思い出す。かまってちゃんは放っておけばいいと思う自分の中に、強い不安感が生まれ、結果的には精神を病んだ。

 私はそんなに強い人間じゃない。口ばっかり達者だけど、打たれ弱いんだ。それでも、思っても無い事が口をついて出てしまう。
「ま、彼女が納得できるまで、時間掛かってもいいよ、私は」
 自分で自分を殴ってやりたい。


 今年もサイとのコンビは解消されず、年始から営業の日々。
 年明けはきっと福袋の話で来るだろうと思っていたが、案の定。
「原宿駆けずり回って10店舗分の福袋買いあさってきたよ」
 あぁそうですかそうですか。面倒臭いやつだ。


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