降臨-9
「分かった……一緒に居ますから、手ぇ離して下さい」
俺の言葉に安心したのか、薫子はゆっくり手を離す。
その手を握った俺はカビ臭い布団まで引いていき、薫子を寝かした。
「隣の部屋に居ますから」
夏だし掛布団はいらないだろう。
「うむ」
やっぱり偉そうに返事をした薫子はおもむろに服を脱ぎだした。
「ちょおっと待った!俺が出ていってからにして下さいよっ!」
慌てて後ろを向いた俺に薫子は不思議そうな声音で答える。
「……そういうものか?」
「そういうもんですよっ!いいですか?!人間は万年発情期なんです。無防備な姿を見せるとすぐに押し倒されて犯されますよ?!」
「……ふむ……心にとめておく」
俺のまくしたてるような忠告に納得した薫子。
つうか俺が犯しそうだし?!俺って欲望の塊だし?!神様犯したらやっぱり滅っせられるよなあ。
「のう、ところでこれはどうやって脱げば良いのじゃ?」
ゴーーーーン
頭の中で鐘が鳴り響いたよ、おい。
あんた俺の話聞いてた?!無防備な姿見せるなって今言わなかった?!俺?
「犬神様……人間に犯される前に俺に犯されたいんですか?」
薫子の方を見ずにブツブツと言うと、薫子は再び納得する。
「ふむ、そうであった。妖怪とは言えお主も雄じゃったな」
雄って……まあ、雄ですけどね。
「そういう事です。何かあったら呼んで下さい」
俺はそそくさと部屋を出て、隣の部屋にあったソファーに仰向けで寝転んだ。
ああ、くそっ勃っちまったじゃねえかよ。
かと言って隣に神様が居るのにヌくわけにはいかないし……生殺しじゃねえか。
もう寝よ、寝るしかねえ。
俺は目を閉じて苦手な英語の文法を頭に浮かべた。
こうでもしないと薫子の肢体を想像してしまいそうだったのだ。
うう……なんだか息苦しい……何かが乗っかっているような……もしかして幽霊とか?勘弁してくれよ……幽霊は今村の担当だ。
寝惚けた状態で目をあけると、目の前に薫子の顔。