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犬猿の仲
【ファンタジー 官能小説】

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降臨-8

「なんじゃ?」

「夜中に若い女の子がフラフラしてたら危ないんで……俺の隠れ家に案内します」

 基本的には外で寝るのが好きだが、天気が悪い時などに使ってる空き家がある。
 俺はそこに薫子を案内し、家捜して寝れるように準備してやった。
 何でこんないけすかない女の為にここまでしてやらにゃいかんのだ……と思いつつ準備が終わると薫子を呼んだ。

「はい、どうぞ。とりあえずは寝れますから。明日、もうちょいマシな場所探しましょう」

 カビ臭い布団だが文句言うなよ〜1日ぐらい我慢しろ。

「……ご苦労……」

 う〜わあ〜、やっぱムカつく、何様だよ?!ああ、そうだよ神様だよ!!欠陥神でも神様なんだよっ!ちくしょう。
 俺は怒りをぐぐぐっと握った右手に閉じ込めて、ひきつった笑顔を向けた。

「それじゃあ、おやすみなさい。犬神様」

 怒りが爆発する前にさっさとこの場を去りたくて、くるりと踵を返して歩きだした……のだが。

つん

「うおっ?!」

 服を引っ張られたらしく、俺はガクンとつんのめる。

「何なんすか?!」

 まだこき使うつもりか?!

「お主は何処へ行く?」

「はあ?」

「さっきの寝床は使えぬのじゃろう?」

「ああ……まあ、ほとぼりが冷めるまでは」

 でも他にも隠れ家は沢山あるし、別にこだわらない。

「此処で寝てはどうか?」

「はい?」

 何を言い出すんだか……と、ふと薫子の尻尾を見たらぷるぷると細かく震えて足の間に挟まっていた。

「はっはあ〜ん……怖いわけだ?」

 思わず思っていた事が口をついて出た。

「怖いワケではない」

 横を向いて憮然と答える薫子。

「一緒に居て下さいって頼んだらどうですか?」

 俺が意地悪っぽく言うと薫子の耳はペタンと頭に張り付き、尻尾もふにゃんと垂れた。
 しかし、服を握った手は離れない。

 ったく……しょうがねえなあ……今村のお人好しが伝ったみたいだ。

 俺は天を仰いで息を吐くと、服を握っている薫子の手を掴む。
 ビクリと顔を向けた薫子の表情は余りにも不安げで、俺の怒りはしおしおと萎んだ。


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