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犬猿の仲
【ファンタジー 官能小説】

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降臨-7

「はっはっはっ、ざまぁみろっ」

 俺は両手を腰に当てて高らかに笑い、人間の姿に化ける。

「つうか、覗きが趣味なんすか?犬神様?」

 茂みに顔を向けて声をかけると、ガサッと茂みが揺れた後不自然な静寂が訪れた。

 いやいや、尻尾みえてるし……バレバレだし……。

「犬神様」

 ガサガサッ……シーン……。

 俺はつかつかと茂みに近づいて両手でそこを掻き分けた。

「ひっ」

 息を飲んだ薫子はペタンと耳を伏せて上目遣いで俺を見る。

 う……可愛いじゃねえか、ちくしょう。

「何やってんすか?暗い時間帯に人間の姿のままだと危ないっすよ?」

 俺はちょこんとしゃがんで、地面にぺったりと座り込んでいる薫子と目線を合わせた。
 薫子は上目遣いのまま俺をジーッと見た後、小さな声で呟く。

「……犬神の姿に戻れぬのだ……」

「はい?」

「天から罰を受けておる……もっと、人間を学べと言われた」

 神様の世界にも上下関係はあり、犬神はトップクラスだが更に上も居る。
 どうやら一番のお偉いさんの怒りをかったようだ。

「何したんすか?」

「何も……しなかったのじゃ」

 話によると、薫子はとある神社に祀られている犬神の後任だった。
 しかし、彼女はどうしても人間に興味が持てず人々の願いも、感謝も全て無視してきた。
 結果、神社は衰退してしまい人々も去ってしまった。
 前任の犬神は嘆き悲しみ、それを知った大御神は薫子に罰を与えた。

『人の世界で人の事をもっと学びなさい。貴女が犬神として成長出来た時、犬神に戻れるでしょう』

 一通り話を聞いた俺は思わず愕然とした。
 神様のくせに罰を受けるとは……とんだ欠陥神だ。

 ちなみに、俺らは今学校の屋上に居る。
 雑木林では猿が出たと報告を受けた猟友会が銃を持って猿……つまり、俺を捜索していた。
 ああ〜…くそっ暫く帰れねえなあ。
 俺が色々と考えている間も薫子の話は続く。

「この学校は……何かあると感じたのじゃ」

 だからここに潜り込もうと決めたらしい。

「ははっ、まさか妖怪が居るとは思わなかったっすか?」

「うむ……お主は何故人間の世界に居るのじゃ?山の中が気楽で良かろうに」

「人間が好きなんですよ。色んな意味で」

 暫く夜空を見上げていた俺はすくっと立ち上がって薫子に手を差し出した。


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