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犬猿の仲
【ファンタジー 官能小説】

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降臨-5

「……何か言う事はないんですかね?犬神様?」

 好きで守ってたワケじゃない……俺は今村や加藤ほどお人好しじゃねえんだ。

「む……苦しゅうない。楽にいたせ」

「あんたなあ〜」

 余りにも偉そうな態度に俺はゆらりと立ち上がる。

「まあまあ、高野くん。お疲れさま」

 薫子様の横に座っていた加藤が俺の肩をポンポン叩いて宥めた。
 別に加藤にねぎらって欲しいワケじゃない……薫子様……いや、薫子の態度が気に入らないだけなのだ。
 憮然として椅子に座りなおした俺はコーラをぐびぐび飲む。

「その飲み物は何じゃ?」

「コーラ」

「甲羅?」

 なんでやねん。

「違うっすよ……ちょっと刺激強いっすけど、飲んで見ますか?」

 俺はニヤリと笑ってグラスを薫子に差し出した。
 薫子は両手でそれを受け取りクンクンと匂いを嗅ぐ。
 尻尾がパッタパッタと大きく左右に揺れていた。
 薫子はチロリと舌をだして少しコーラを舐める。

(うおっ、なんかエロっ)

 恐る恐る舐める姿はなんだか艶かしく、腰がズクンと疼く。

 ああ、どうせ猿ですよ……紛れもなく猿の妖怪ですよ……どうせ万年発情期ですよ……ムカつく女相手でもエロい事考えちまいますよ……悪かったなコノヤロ。

 内心ひとりツッコミをしながら薫子の様子を伺う。
 意を決した薫子はグラスに口をつけて一口コーラを飲んだ。
 瞬間、薫子の尻尾がブワッと毛羽立ち、倍ぐらいの大きさになる。

「ゲホッ、なんじゃこれはっ」

「だから、コーラだって。炭酸飲料……犬神様には刺激が強すぎましたか?」

 はっはっはあ〜ざま〜みろっての。
 俺のささやかな復讐は大成功だ。

「けほっ……このような飲み物を好むとは……やはり人間は良く分からん」

 ポツリと呟く薫子の言葉を聞いて、俺は朝から思っていた疑問を投げかけた。

「そもそも、なんで犬神様が人間の世界に?わざわざ変化してまで?」

 俺の質問に薫子はギクリと尻尾を直立させ、視線をさ迷わせた後小さく答える。

「……お主には……関係ない……」

ムカッ

 ほほう、こんだけこき使っておきながら関係ないと?
 いくら犬神様ったってキレちゃうよ、俺。

「分かった……んじゃあ、関係ないみたいなんで俺帰るわ……」

「高野くん?!」

 呼び止める加藤を無視して怒鳴りつけたい気持ちをなんとか押さえ、レジに薫子の分まで金を置いて足音も荒く寝床へ向かった。
 つっても学校の裏にある雑木林が寝床なんだがな。

 雑木林の中心にある大きな柏ノ木。
 ここが俺のスイートホーム。

 誰も居ない事を確認してひょいひょいっと木に登る。
 木の上で変化を解いた俺は猿の姿に戻って大きく背伸びした。


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