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犬猿の仲
【ファンタジー 官能小説】

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降臨-3

「彼氏は居ますかぁ?」

「胸は何カップ〜?」

 ああ、知らないとはなんと幸せな事なんだろうか……神様にそんな口きいたらバチが当たるぞ?!この馬鹿共がっ。
 はらはらする俺を余所に犬神様……いや、薫子様は無表情で答えた。

「彼氏はおりません。胸のサイズは……」

「ストーップ!!」

 薫子様の台詞を担任が慌てて遮る。

「乾、そんな事まで律義に答えるな」

 注意する担任に、後もう少しで聞き出せたのに、と男共からブーイングが飛び交う。

「はあ」

 片手を頬に当ててきょとんとしている薫子様……なんだ?まだひよっこなのか?
 俺は少し落ち着いて様子を見る事にした。

「おい、高野。あれ妖怪か?」

 獣耳や尻尾が見えた今村が身を乗り出して俺に聞いてくる。

「ばかやろ……罰当たりな事言うな。犬神様だよ」

「へえ。神様なんだ……ああ、だからお前さっきから落ち着かねえのか」

 納得した今村は肘をついた手に顎を乗せてまじまじと薫子様を見ていた。

「席は高野の横だな」

「い゛っ?!」

 担任の言葉に俺はサァッと青くなってしまう。
 薫子様は滑るような足取りで俺の横に来ると、軽く会釈して席に座った。
 再び冷や汗が吹き出す俺をほっといてホームルームは終わり、1限目が始まるまでの短い休み時間の間、隣の席は黒山の人だかりになる。

「今までどこの高校にいたの?」

「隣の県の高専に通っておりました」

「ねえねえ、さっきの質問!胸のサイズは?!」

「その質問には答えなくてもいいと先生がおっしゃったのでお答え出来ません」

 ひとつひとつ丁寧に対応する薫子様……しかし、やっぱり人間慣れしてないんだな、と思わせる対応の仕方だ。
 頭の上で獣耳がせわしなく動いて、尻尾はてれんと垂れている。
 ふむ……どうやら戸惑っているみたいだ。
 どんな理由で人間に化けているのかは知らないが、出来るだけ関わらないようにしよう。


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