降臨-22
「犬神様」
「だから、名前を呼んでくれと言ったではないか」
拗ねた声音の薫子を見上げると、背後にある窓から満月が覗いていてまるで後光のようだった。
「薫子……様」
「呼び捨てで」
「いや、それはちょっと」
「さっきは呼んでおったではないか」
「マジすか?」
覚えてねえ!
「2回も……じゃから、頼む……」
俺は躊躇いつつも薫子の頬にキスを落とす。
「薫子」
「なんだ、アツ?」
耳元で囁くように名前を呼ぶと、薫子は嬉しそうに笑う。
「出来れば……その……次は優しくしますんで……リベンジ……お願い出来ますか?」
「すぐにか?」
「それは、その」
俺は猿だからいつでも準備万端だが、いくら何でも薫子にはキツイだろう。
「ふふ、お主の言う優しいのも体験したい……私からも頼む」
薫子はそう言って自分からキスしてきた。
そのキスは甘い甘い禁断の味……夢中になったら、その先には破滅しか無い。
でも、まあ、いっか……俺は薫子にキスを返して彼女を抱き上げ、布団を敷いた部屋へと移動する。
今度は優しく、たっぷりの愛を込めて……俺の神様を抱く為に。
ー続くー