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暗示
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暗示-1

「…って、どっかの誰かが言ってたよん?」
お前が最後に俺に言った言葉を、俺は思い出せずにいた。誰かの言葉を借りただけの慰め。だけど、お前は次の日、俺に会う前に天に召された。最悪の交通事故…。車と車の間に挟まれ、胴体は上下半分になったらしい。
「お前なんか死んじまえ」
キレイなお前の抜け殻を目の前にして俺はそう言った。もう既にいない野郎にそんなことを吐き捨てる。何故か涙が、嗚咽と共に溢れだし、気付けば俺はお前の家を飛び出し、近くの公園のベンチに腰掛けていた。空は際限のないほどの雲に覆われ、無限の暗闇を生み、俺の悲しみをより一層引き立てる。
「よく言ってたよな。死は辛い事じゃないって」
誰もいない夜の公園で、飽きることなく俺は独り言を繰り返す。
「確かにお前は辛くないかもしれない、でもな?残された方は…最…悪なんだぞ…」
乾いたはずの涙の跡が、再び濡れる。小学校から現在の高校までずっと一緒だったから、俺は自分の半身が消し飛んだかのような気分に苛まれる。
「あ…」
ふと空を見上げると、雲が割れ、綺麗な満月が俺を照らしていた。そして……。
『人一人の人生なんざ、世界の一欠片。ヤなことがあれば忘れればいいし、いいことがあれば胸の内に留めとけばいい。結局ちっちゃい存在なら、思うように生きてみたら?──って、誰かが言ってたよん?』
その時にお前の言葉を思い出した。後悔しない程度に自分の道をあるけ…か。
「ヤなことを、すべて忘れるほど俺は薄情じゃねぇよ…」
月に向かって、少し微笑む。お前が見ているような…そんな気がしたから…。


END


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