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もうひとつの心臓
【大人 恋愛小説】

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22 志保-1

「青い線が出たら、妊娠の可能性があります、かぁ」
 妊娠検査薬と説明書を手に、自宅のトイレに入った。
 10月に入ろうとしているこの日、まだ暑さは残り、狭いトイレには温い湿気が充満していた。
 細いスティック状になった検査キットの先端にある、白い不織布の様な部分に尿を掛ける。
 数秒もすると、透明の窓に青いラインがはっきりと出てきた。

 胸の辺りがざわざわした。形容しがたい感情に覆われて行く。お腹に、赤ちゃんがいる。

 普通のセックスでは避妊している。しかし暴力を伴うセックス(犯されている時)では、避妊していない筈だ。妊娠するのも時間の問題だった訳だ。
 報告したら、喜んでくれるだろうか。また暴力を振るわれるだろうか。
 孤独だった2人の間に家族が出来る事を、手放しで喜んでくれはしないだろうか。

 不織布の部分にキャップをし、周りをトイレットペーパーで拭った。この青いラインは3日は消えないらしい。
 明良の機嫌を伺って、良さそうな時に見せる事にしよう。洗面所の棚の端に、検査薬をそっと置いた。

 あぁ、お腹に赤ちゃんが。明良と私の血を継いだ赤ちゃんがいるんだ。家族のいない私達に、家族が出来るんだ。
 男の子だったら明良に似るといい。きっとカッコイイ男の子になる。
 女の子でも明良に似ればいい。目鼻立ちのくっきりした綺麗な女の子になる。

 生まれたら施設に報告に行こう。先生たちはきっと喜ぶに違いない。
 小さい頃から行動を共にしてきた施設育ちの私達から、赤ちゃんが生まれるなんて、先生ならきっとお赤飯を炊くな。
 それにしても、いつ妊娠したんだろう。最近のセックスは、暴力を振るわれる事が殆どで、きちんとしたセックスをした事なんて数えるほどだ。
 セックスの時は避妊をしているのだから、やはり暴力を振るわれて犯されて出来た子供という事か。そう思うと、複雑な気分になる。


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