投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)
【ファンタジー 官能小説】

満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最初へ 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 50 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 52 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最後へ

暗灰色の狂狼-3

……よろめきながら、ルーディは立ち上がった。
 勝った。
 黒い狼の息の根を止めた。
 だけど、それがなんだ?
 渇きはまだ治まらない。

 まだ足りない。
 もっともっと……

「っ……」

 不意に、かすかなうめき声が聞えた。
 ホールの中央に転がっている女が、かすかに身じろぎする。

 手負いの獲物。まだ息のある獲物がいた。
 乾いて飢えてたまらない。喰らい尽くせ!

 跳躍し、一気にとびかかる。
 ホールいっぱいにむせ返るような血の匂いが立ち込めている。
 何頭もの人狼の血と、それから……それから……甘い……ひどく甘い……

「ぐ……」

 柔らかそうな白い皮膚につき立てられる寸前で、牙が止る。
 女から溢れ出る血の芳香が、鼻腔を柔らかく満たした。
 満たされて……いた。

 『ルーディ……』

 愛情を込めて呼んでくれる声。
 抱きしめてくれた華奢な腕。
 一生懸命作ってくれた焼き菓子の味だって、思い出した。

 どうして……忘れてたんだろう……
 飢えも乾きも、とっくに俺は満たされていたじゃないか。
 彼女が満たしてくれた。
 この世でただ一人の、俺の”つがい”が満たしてくれた。

「…………ラ……ヴィ……?」

 獣の身体は、気づけば人の型へ戻っていた。
 青ざめて脂汗を浮べたラヴィが、薄っすら目をあけてルーディを見た。
 かすかに動いた唇が、小さく笑みの形をつくる。


 あぁ、そうだ。
 初めて見た時、なかなか可愛い子だと思った。
 無理やり晒された処女膜なんかより、この子が笑った顔を見たいなぁ、と思った。
 

……やっぱり、俺は間違ってた。メチャクチャ可愛いどころじゃない。

(ラヴィは、世界一可愛い)

 目の前が暗くなって、気が遠くなる。




満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最初へ 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 50 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 52 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前