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満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)
【ファンタジー 官能小説】

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人狼族の裏切り者(注意、性描写あり)-7

 妙な国王は、ルーディに薬草をくれ、そのまま本当に黙って逃がしてくれた。
 それから二日間、罠ではないかと悩んだが、結局行く事にした。どのみち、持ち帰った薬草は根づかずにすぐ枯れてしまったのだ。
 しばらく花壇に身を潜めていると、ヴェルナーがやってきたが、若い男を一人、伴っていた。
 濃いグレーの髪とアイスブルーの瞳をした男は、天使の彫像もかくやというような冷たい美貌で、きっちりした服装の上に長い白衣を羽織っていた。

「ヘルマン・エーベルハルトと申します。以後、お見知りおきを」

 男は丁重に名乗った。服装からそうではないかと思ったが、やはり錬金術師だという。

「またの名を、世界で一番敵に回したくない男。とも言う」

 茶化すヴェルナーを横目で見て、ヘルマンは軽く肩をすくめた。
 優雅で丁重な物腰で、人当たりの良さそうな笑顔を浮べているが、なんだか胡散臭い。人狼の鋭い嗅覚が、それを告げる。
 ただの人間じゃないような……氷河に落ちて凍りついた死体を思わせる、不気味な匂いがした。

「国王から、君の事を伺いました。君の言う『発作』の症状は、僕も一度しか拝見しませんでしたが……非常に興味深いお話ですね」
「……だったら、なんだよ」

 やっぱり罠だったんじゃないかと、疑いが強くなってきたが……

「君は、錬金術を学ぶ気はありますか?君があの薬草から、発作をもっと効果的に抑える鎮静剤を作りたいというなら、協力いたします」
「なっ!?なんで!?」

 唐突な話に驚き、ルーディはヘルマンとヴェルナーを交互に見比べる。

「これは、我が国の為にもなる事だ」

 ヴェルナーは、静かに言った。

「君の言うとおり、人狼はこのままでは確実に滅ぶ。この近隣諸国としては、人狼被害がなくなるのは大変喜ばしい事だ」
「……ぅ」
「しかし、我が国にとっては必ずしも吉とは出なくてね」
「え?」
「人狼の被害がなくなれば、余力を取り戻した各国に、今度はこの国が襲われる」

 ヴェルナーの横で、ヘルマンが苦笑した。

「つまり、君たちはいい防波堤という事でしてね。無論、この国で略奪されるのは困りますが、いなくなっても不都合という事です」
「ちょ……なんだよ、それ!」
「おや、お情けの慈悲で、君たちを救いたいとでも言って欲しかったのですか?」
「見くびるな!!」

 犬歯をむき出して、思わず唸った。

「くくく……プライドの高い人狼でしたら、そう言うでしょうねぇ」

 ヘルマンは整った口元に、人の悪い笑みを浮かべる。匂いで思ったとおり、とことん性格の悪い男らしい。

「ですから、君は自分で選びなさい。フロッケンベルクに利用されるとしても一族の存命を救う薬を作るかどうか」
「…………錬金術なんか、やった事ない」
「誰しも初めて学ぶ事はあります。用はやる気があるかどうかですよ」

 ニコリと、ヘルマンの笑みが少し優しいものに変わった。
 この胡散臭い男に、内心の動きは全て見抜かれているらしい。
 それでもまだ少し悩んだが、ルーディは頷いた。
 利用されるとしても『発作』を止めるのが先決だ。
 ルーディを満足そうに眺め、ヘルマンは持っていた包みを渡す。中には衣服と、錬金術師がつけるフロッケンベルクの紋章入りブローチが入っていた。

「生憎と僕は、来月には他国へ出向かなくてはいけないので、君に教えられる期間は一ヶ月です。その間に基礎を学び、後は錬金術ギルドで知識を深めなさい」

 そして、小さく独り言のように、ヘルマンは呟いた。

「周囲に流されず、自身でよく考えましたね……君はなかなかに見所があります」



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