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満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)
【ファンタジー 官能小説】

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人狼族の裏切り者(注意、性描写あり)-1

 気絶してしまったラヴィは、サーフィが馬車に運んでくれた。
 再び狼に変化し、人狼たちが戻ってくる気配がない事を確認したあと、ルーディはラヴィが寝かされているのとは違う馬車へ入る。

 幌馬車の中では、アイリーンが待っていた。
 ルーディは人間に戻り、アイリーンの用意してくれた衣服を身につけた。
 狼に変身する時、衣服は身につけれないので、戻ったあとは当然裸になってしまうのだ。

「ルーディ、人狼と公爵が関係している証拠品は、みつけられましたか?」

 仕事の話をする時のアイリーンは、普段のざっくばらんな口調とまるで違う。
 これは彼女の中ではとても大事な習慣らしい。

「いいえ。……兄は用心深いですから」

 今は人狼の長となっている兄を思い出しながら、ルーディの口調も自然と改まる。
 サーフィが持ってきた手紙は、悪い知らせが一つ。
 それからフロッケンベルク王からの指示が一つだった。

 悪い知らせは、人狼族が遠いこのイスパニラ国まで来ているという事。
 一族が今までルーディの行方を放っておいたのは、彼ら自身も種の存亡の危機にあり、それどころでは無かっただけだ。
 しかし、ひとたび目にすればどうなるかは、先ほどの戦闘が物語っている。
 そしてフロッケンベルク王から指示は、バーグレイ商会と共に、ソフィア姫の暗殺計画を防げという内容だった。
 この二つは、互いに深く関係している。

 イスパニラ王の弟……つまりソフィアの叔父であるギスレ公爵が、人狼と手を組み、彼女が帰国する際に暗殺をもくろんでいるのだというのだ。
 そして、ソフィアの兄や姉たちを犯人にしたてあげる、偽の証拠も作り上げているらしい。
 ソフィアが死に、他の兄弟達が投獄されれば、自分が時期王になれるという、甘い野望を抱いている事は見え透いている。

 ギスレ公爵は、深い教養があり頭のキレる策士……と、本人は思っている。
 だが実際は、軍師としても人間としても今ひとつ底が浅い、ただのインテリ気取りの男だ。
 プライドの高い人狼が、そんな人間の言いなりになるなど、ルーディもアイリーンも信じられない。
 何か裏があるとは思うが、実際に人狼たちはイスパニラ王都に来ている。
 無能者と影口と叩かれていようとも、ギスレ公爵は仮にも王弟殿下だ。起訴するにはそれなりの証拠品が必要となる。

 ルーディはアイリーンの手紙を受け取った後、指示通りにギスレ公爵の屋敷に忍び込み、目当ての品を探していたのだ。
 そしてルーディは自分の考えが甘かった事を知る。
 人狼たちがイスパニラ王都に着たのは、ギスレ公爵との契約のためだが、十数匹はルーディを探して王都中をうろついていた。

 彼らの追跡は、執拗で苛烈を極めていた。
 ラヴィがあのまま家に残っていたら、すぐ見つかって惨殺されていただろう。
 もはや彼らにとって、ルーディは単なる敵以上に憎い裏切り者だし、彼らが住みなれた地を追われたのすら、ルーディのせいだと信じていた。



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