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満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)
【ファンタジー 官能小説】

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絶望の奴隷少女-1

  大陸の南西端。
 紺碧の海にまぶしい太陽が照り付けるこの地に、イスパニラ国は王都を構えていた。
 海に面した一角以外は、グルリと高い塀で覆われており、大陸行路からつながる道に作られた門で、通行のチェックがなされる。
 中心にある王城は、さらに堀で防御され、高く掲げられた赤い国旗が、いつでも雄雄しくはためいていた。
 その旗ざおの天辺に昇っても、王都を端まですっかり見渡す事は難しい。
 イスパニラ王都は呆れるほど広く、さまざまな地形に富んでいる。
 城付近のきちんと区画整備がなされた市街地、のどかな郊外の別荘地はもちろん、自然の地形をそのまま残している部分も多い。原っぱ、小高い丘、峡谷までもさまざまだ。
 昔の境界線だった塀が各所に残り、巨人が作ったつぎはぎパッチワークのようにも見える。

 かつてイスパニラは農耕に明け暮れていた平和な小国だった。
 だが昔、野心的な王が現れた事で運命は一変した。
 イスパニラの民は鍬を剣に持ち替え、ワインの替わりに人血を流し、近隣諸国を次々に攻め落とした。 それ以来、百数十年も続いた流血時代が、このツギハギ王都を縫い上げたのだ。
 そして血に飽く事のないイスパニラは、壮大なパッチワーク作りをまだまだ作り続けている。

 地図を広げ、イスパニラの国土部分を赤く塗れば、大陸の南西一帯を統べている他に、各所へ大小の植民地を無数に持っている事が一目でわかる。まるで、貫いた大地から飛び散る鮮血のようだ。
 植民地と本国の合間にある国は、もちろん心穏やかではいられない。
 いや、遠かれ近かれいずこの国も同じだった。いつ何時、どんな口実で攻め入られてもおかしくはないのだ。

 イスパニラの一挙一動に冷や汗をかかなくて良くなる時は、すなわち自国が滅ぼされ諦めた時だ。


 大陸に名だたる軍事大国だけあり、イスパニラ国の王都は、軍人や兵士が多い。
 もちろん、彼らを相手にする商売人や家族もいるし、観光客もいる。場所によっては少々物々しいが、とにかく賑やかで活気がある大都市だ。

 気持ちの良い秋晴れの日だった。
 道端で遊ぶ子どもたちが、流行り歌のリズムに合わせて縄跳びをしている。

“イスパニラの赤い甲冑を見れば、賢い者は戦わず逃げる
 逃げずに死ぬのは青い傭兵
 愚かな北の忠犬たち“

 袖の短い衣服から、小麦色に日焼けしたむき出しの腕がのぞき、その腕にも額にも、汗が浮かんでいた。
 この地は冬でも霜の降りない温暖な気候だが、秋も深まった季節なのに、今日は真夏のような気温だ。
 強い日差しが、背の高い石づくりの建物と、オレンジの街路樹に降り注ぐ。
 賑やかで広い表通りから裏通りに移ると、立ち並ぶ店の種類も売春宿を初めいかがわしいものに移り変わる。

 その中でもひときわ場所をとっているのが、奴隷市場だ。
 老若男女を問わず、あらゆる種族、あらゆる用途に使われる為の奴隷がここで揃うと言われていた。
 円形の青空広場を、石づくりの建物がグルリと取り囲んでいる。
 広場の中央では、新たに連れて来られた奴隷たちが縄につながれて並び、検疫を受け、片隅には真っ赤な火を炊いた炉がある。炉からはむわっと熱があがり、陽炎がゆらめく。

 奴隷市場に漂う空気の匂いは、とても芳しいとはいいがたい。
 伝染病などが流行らないよう、最低限の衛生は保たれているが、汗や垢の匂い、それにときおりは血の匂いが入り混じった生臭い空気が充満している。
 建物は細かく仕切られ、それぞれの店になっていた。
 客達は広場や店で奴隷商人達と交渉にいそしんでいる。

 店によって取り揃えている『商品』の傾向はやや異なる。
 エルフ・ピクシー・ドワーフなど亜種をそろえた店。肉体労働用の健康な男を揃えた店。子どもばかりを扱う店……。
 なかでも特に需要がある、女を揃えた店は、何件もあった。




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