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a village
【二次創作 その他小説】

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F-1

 田植え休み明けの集会も終わり、生徒逹は講堂を後にする。
 先生逹も一旦、職員室に教材を取りに戻ってから、各人受け持ちの教室へと向かうのだが、

「どうしたんです?ため息なんか吐いて」
「黙って付いて来て下さいッ」

 林田を伴って歩く雛子は一人、憤懣やる方無いといった様子だ。
 いくら高坂から通達されたとはいえ、四六時中、林田と同じ教室で過ごす事など御免蒙りたい。そんな思いが、ため息となって表れた。
 しかし、こうなってしまう引き金を引いたのは自分自身であり、その点は「短気は損気」と、反省頻りの雛子であった。

「林田先生ッ」

 教室の出入口へと差し掛かった時、雛子は突如、忘れ物でもしたかの様に歩みを止めた。
 そんな様子を見た林田はというと、雛子が真剣な顔をしている事に些か面食らった。

「な、なんですか?」

 たじろぐ林田を前に、雛子は神妙な面持ちで語り掛ける。

「こうなった状況に不満もあるでしょうが、事此処に至っては仕方ありません。
 これからは、同じ学級の担任として協力しませんか?」

 なんと、自らが遜って和解を申し入れたのだ。
 突拍子もない珍事に、林田は驚きを禁じ得なかったが、提言に異存は無かった。

「仰有る通りです。私だって、最初から貴女と反目する腹積もりでは有りませんから。大いに協力させてもらいます」
「ありがとうございます……」
「でも、先生」
「なんですか?」
「その割には、顔が険しいのですが?」

 林田の指摘に、雛子の頬はちょっと赤らむ。

「あ、当たり前です。私は大石先生みたいに思慮深くありませんから、直ぐに忘れるなんて無理です」

 どうやら、未だ心の中に蟠りが残存しているようだ。

「誰です?その、大石先生って」
「知らないんですか!」

 雛子の驚き様は、知っているのが当然だと言っている。林田は顧みるが、その様な名前の者など記憶にない。

「ええ。そんなに有名な先生なんですか?」
「言ったら思い出しますよ。それより……」

 そう言って林田に一歩近づくと、耳打ちするように囁いた。

「……これから、子供逹に挨拶をしてもらいますけど、私が呼んだら中に入って来て下さい」
「どうしてです?」
「先ず、こうなった経緯を説明しないと、混乱するでしょ」
「まあ、そうですね」
「だから、私が説明し終えたら呼びますから」

 打ち合わせを済ませた雛子は、林田を廊下に置き去りにして教室の扉を開けた。

「みんな、おはよう!」

 雛子の姿が見えると同時に、級長である公子が席を立って「起立ッ!」と威勢のよい声を挙げた。
 周りの子供逹も、公子の後に続いて席を立ち、身じろぎもしない格好で待っている。
 雛子は教壇の前で黒板を背にすると、子供逹の方を見た。


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