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あやなくもへだてけるかな夜をかさね
【その他 官能小説】

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あやなくもへだてけるかな夜をかさね-7

テーブルに綺麗に並べられた料理を前に、智子は頬杖を突いていた。
この家は、こんなに静かだっただろうか?
子供たちが居ない家の中は、驚くほど静かで、怖いほどだ。
いつも溢れていた賑やかな声、暖かな灯り。
その中に居る自分。
全てが幻のようにすら感じる。
…そう言えば…
あの賑やかで明るい部屋の中に、夫は居ないことの方が多く無かったか?
智子と子供たちで形作られた空間。
夫の姿は、別の空間にあったのでは無かったか。
…もしかしたら…あの人も寂しかった?…
不意に智子の心にそんな想いが沸き上がった。
ローンの為とは言え、根底にあるのは家族の為。
夜遅くまで働く夫に、浮気を疑ったことなど一度も無かった。
浮気をしている男がどんなに完璧に隠していると思っていても、女の直感が鋭くその事実を嗅ぎ取るのと同じほど、浮気をしていない事実はわかるものなのだ。女には…。
私はあの人に優しかっただろうか?
智子は自身に問いかける。
子供たちが生まれ、日々に追われるにつれ、智子自身も女を忘れていった。
いつしか、そこに居たのは母であるだけの自分。
「はぁ…」
智子は深く溜め息を吐いた。


「ただいま」
夫が帰ってきた。
「おかえりなさい」
いつもは玄関まで出迎えることなど無いのだが、智子は玄関に出る。
「どうしたの?珍しいね」
夫は、戸惑ったふうでもあったが、笑顔を見せると鞄を手渡した。
「うん、なんとなく」
夫の笑顔に返すように、智子も笑顔で答える。
「今夜はちょっと手抜き」
ウフフと肩を竦めながらそう言った。
「いいよ、いつも忙しいんだから、たまには手を抜いたら」
「ありがとう。ワインもあるんだ、飲むでしょ?」
「へぇー、凄いじゃん」
何故だろう、いつもなら会話など無いはずの二人なのに…。
めったに使うことの無いワイングラスを取り出しながら、智子は思った。
子供たちの居ない食卓で、デパ地下のデリを摘みながらワインを飲む。
たったそれだけのことなのに、いつもとは違う。
「よく早く帰ってこられたわね?」
「うん、皆休んでるのに、僕だけアクセク働いてるのも馬鹿らしくなってさ」
会社自体は休みだが、夫の部署は納期に追われていた為、何人かの社員は自主的に出社している。
「働き過ぎよ。もう若く無いんだから無理しないでね」
「ああ、ありがとう」
「子供たち、無事着いたって連絡あったわ」
「そうか、少し心配してたんだよ。お義母さんたちに迷惑かけちゃわないかな?」
「あら、とても喜んでるのよ、特に父がね」
夫との食事をこんなに楽しめたのは、いつ以来だろう?
ワインの量が減ってゆくにつれ、二人の会話は増えていった。
いつになく饒舌な夫。
自分の問いかけに答えてもらえる。
…なんて気持ちいいんだろう…
智子はワインが回りつつある頭の中でそう思っていた。
テーブルの上を片づけ、食器を洗う智子。
夫は、テレビを見ている。
いつもと同じ光景だが、いつもとどこか違った。
いつもの智子なら…子供たちの明日の支度に気をもみながら、帰りの遅い夫に苛立っていた。
早くここを片づけて、子供たちをお風呂に入れて…イライラしながら食器を洗っているのに…。
今夜は違う。
夫と二人、楽しく食事をした後だと思うと、食器を洗うのも楽しかった。
夫が立ち上がり、部屋を出て行こうとした。
「お風呂?」
「うん、さっさと入ってくるよ」
「へぇ、珍しっ!」
いつもなら、『片づかないから早く入って』と、頼んでもなかなか腰の上がらない人なのに…。
智子は、洗剤を洗い流しながら、口元が緩むのを感じた。


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