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ゼビア・ズ・サイドストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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時の邂逅 〜追記〜-2

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 その日、グロウは人型になって乗り合い馬車に乗っていた。
 別に乗り物に乗らなくてもいいのだが、雨が酷くなり濡れるのが嫌だったのだ。

 契約していた召喚師サガンが死んでから大体、500年……そろそろデレクシスが産まれる頃かなあ……などと考えていたら無性にカイザスに行きたくなった。
 エネルギー消費を最小限にする為に、獣型でのんびり南の方へ移動していたのだが雲行きが怪しくなったので丁度近くを通った乗り合い馬車に乗ったのだ。
 人型で行動する時の為に必要最低限のお金も持っていたし、自分以外の力で動くのもたまには良い。

「ねえ、貴方はどこに行くの?」

 突然、左横に座っていた女性がグロウに話かけてきた。
 驚いてそっちを見ると、長い黒髪を高い位置で一つに結んだ女性が黒い目をくりくりさせていた。

「アキ、やめないか。ご迷惑だよ」

「ええ〜?!」

 更に奥に居た男性がグロウに軽く頭を下げるが、女性……アキは不満そうに頬を膨らませる。
 若い夫婦なのだろう……膨れっ面の妻を宥める男は優しい微笑みを顔に浮かべており、その手は大きく膨らんだアキのお腹に添えられていた。

『別に構わない……カイザスに行くつもりだ』

 グロウはウィルを思い出しながらアキのお腹を見つめる。

「南の大陸の?」

『そう……アンタらは?』

「私達は妻の実家に……」

 馬車の外で降る激しい雨の音をBGMにして、グロウと若夫婦はとりとめの無い話をした。
 若夫婦は主に産まれてくる子供の事を……占い師によるとお腹の子は男の子らしい、名前は何にしようか考え中……魔力を持って産まれたらゼビアにある魔法学校に通わせたい……などなど。
 幸せそうに、嬉しそうに話すアキはとても輝いている。

 その時、ガタンという音と共に馬車が大きく揺れた。

「きゃああっ!」

「アキ!」

 座っていた座席から前にアキが投げ出され、グロウと旦那は咄嗟に腕を伸ばす。
 両手でお腹を庇うように倒れるアキを、旦那が抱き止めグロウが旦那ごと両腕で包み込んだ。
 背中から床に叩きつけられたグロウは一瞬、肺の空気が無くなる。

『っ……ぶはっ!』

 無理矢理空気を肺に送りこんで咳き込むグロウの腕の中でアキが呻く。

『ゲホッ…だ……いじょうぶか?』

「ええ、ありがとう」

「すまない」

 いまだにガタガタ揺れる馬車の中で、乗客達が次々と体を起こした。

「何があったんだ?」

「見てくる」

 御者の様子を見ようとアキの旦那と数人の客が前に移動した時……。

ゴシャアアァァァ!

 物凄い地響きと、轟音がして、馬車の前半分が視界から消えて、代わりに凄い勢いの土砂が視界を埋める。


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