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KILL OR DIE
【アクション その他小説】

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KILL OR DIE-4

もしキサラギが跳弾に気付かずに四撃目を放っていれば、奴は俺を切り裂いた後、背後からの跳弾に貫かれ二人は相撃ちとなっていたはずだ。しかし奴はそれに気付き、捨て身で俺を殺す愚を避けた。それは奴に取っても俺に取っても最善の策だったという訳だ。この攻防で分かったこと。それは奴に懐に入るのは不可能だという事と、もう一つ、奴がほぼ同時に繰出す事のできる剣撃は四発が限度という事。これが重要だ。それを考えると俺の勝気は遠距離からの狙撃しかない訳だが、銃弾が奴に効かない事は最初の攻防で証明済みだ。一度見せた跳弾がキサラギ程の剣士に通用するとも思えない。
「手詰まりですね。あなた程腕の立つの方なら、あなたが私に勝てない事はお分かりでしょう。抵抗せずに、死を受け入れて貰えませんか?」
「生憎と、まだ光明は消えてないんでな」
俺は不敵な笑みを浮かべてキサラギをにらみ付けた。
「はったりかどうか…試させて貰いましょう」
無感動に言い、キサラギは刀を構え直す。俺は切り裂かれた右肩に走る痛みを無視し、きつくグリップを握り締めた。何にせよ、次が最後の攻防になる。
素早くサイドステップ。手近にあった椅子をキサラギに向けて蹴り上げた。キサラギは刀を横なぎにし、椅子を両断すると、音もなく忍び寄る。俺は弾丸を嵐のようにばら蒔き、時折椅子を蹴り飛ばしながら、必死で奴の間合いに入るまいと努めた。キサラギはことごとく放たれる弾丸を弾き飛ばす。弾き飛ばされた弾は、周りにいる不運なカモッラの何人かに喰らい付いた。
「逃げ惑うだけとは、ローハインドの名が泣きますよ」
嘲笑するキサラギ。確かに、そろそろ頃合いだ。俺は今度はテーブルを奴に向けて蹴り上げる。俺が全力で蹴ると木製のテーブルは粉々に砕けてしまうため、力加減が必要だ。椅子やテーブルの材質の強度は、先程からの蹴り上げで学習済み。飛来する大型のテーブルには亀裂が入り、砕ける直前の状態を保ったままキサラギを猛襲する。その速度は、微妙な力加減が生んだ、テーブルを壊さずに出せる最高速度だ。俺は飛来するテーブルの影に隠れながら再びキサラギに突進する。無論、それは奴も承知済みだ。
「愚かな!二度も同じ手が通用するとでも思っているのですか!?」
キサラギは声を張り上げ、テーブルを切り裂いた。
俺の眼前でテーブルが真っ二つに割れ、視界が開けた。絡み合う二つの視線。その時キサラギは勝利を確信していた。俺の左手を見るまでは…。
「!!…二丁拳銃!?隠していたのか!」
「それが奥の手ってもんだ」
奴が同時に放てる斬撃は四発。対し、俺は右が三発、左が二発だが、右肩の傷で筋肉が断たれているため、右が二発と左の二発。四対四。普通に考えれば、その争いは相撃ち。しかし、拳銃には弾切れがあるため、次の攻防はキサラギに歩がある。 奴が神速の閃きを四条放つ。俺は右手の銃から弾丸を二発吐き出し、二本の剣撃の進路を変える。同時に放たれた三撃目は、左手の銃撃が防いだ。そして、この一連の攻防最後の、雌雄を決する四撃目――それは頭上から俺の頭部を襲う。俺は四度目の引金を引き絞った。耳をつんざく轟音。それは今までの銃声とは一味違っていた。俺が左手の銃に込めた四発目から六発目の弾丸は、炸裂弾と呼ばれる爆発型の銃弾――俺の真の切札だ。 炸裂弾は刀に食らい付き、苛烈なまでの爆炎を上げる。そのすさまじい威力は、キサラギの手から皮膚と一緒に刀を持ち上げ、高々と吹き飛ばす。
持ち主の手を離れた刀は、回転しながら上昇し、やがて天井へとぶつかり、降下する。俺は右手の銃を放って刀をさらに遠くへと飛ばす。それと同時に、左手の銃をキサラギの眉間へと突きき付けた。周囲にたたずんでいるカモッラたちに、動揺と驚愕が走る。
チェックメイト。
「さて…見物料を払ってもらおうか」
「…まいりましたね」
キサラギは両手を上げて降伏の意を表明しようともせず、ただ静かに瞳を閉ざした。死を受け入れし者の顔。いさぎよい事だ。
「いや、待て。肝心な事を忘れる所だった。死ぬ前に一つ、答えて貰おうか。あの男の居場所を知るための手掛りを、知っていると言ったな。それは何の事だ?」
銃口をキサラギの眉間に押し付けて言った。キサラギは軽く押し黙った後、ゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
「……私はあなたに、彼と逢ったのは随分と昔の事だと言いましたね…」
俺はうなずいた。
「嘘です。私がグレス・ローハインドに逢ったのは、ほんの三日前。しかも、この店の中です」
「なん…だと…」
奴が、ほんの三日前には此処に居たと言うのか!俺は、銃を持つ手が震え出すのを止めることができなかった。



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