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KILL OR DIE
【アクション その他小説】

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KILL OR DIE-2

グレス…俺の親父の名…俺の心に深い傷跡を残した忌々しき名だ。俺は苦渋に顔を歪める。「ごたくはいい。俺に何の用だ」ぶっきらぼうに俺は言った。アジア系の男はその言葉を無視し、続けた。「グレス・ローハンドがアル・カポネの組織を裏切り、賞金狩りとしてその腕を振るい始めたのは二十年前。組織に命を狙われながらも、彼は独り息子に自らの技を叩き込んだ。余談ですが、その子の母親は元アル・カポネの愛人。で、間違い無いですね?Mrローハインド」 「余談と言うなら、貴様の話しの全てがそうだ」氷雪の如く無表情に話す男に、俺も同じ顔で答えた。顔に似合わず饒舌な男に、俺は次第に殺意を覚える。「手厳しいですね。まぁいい。その余談を続けましょう。グレス・ローハインドは妻子を引き連れ、アメリカ中を放浪した。そのお荷物を抱えながら、それを失わずに済んだのは、彼の実力そのものが並外れていたのと、彼が変装の達人であったから。そうして大陸をさ迷うこと十五年。子供は十七になっていた。その日、息子が一人前のガンスリンガーとしての成長を遂げた事を確信したグレス・ローハインドは、ある思惑のため、息子の眼前で、妻の額に銃弾
を放った…」
俺は押し黙ったまま、口の端に煙草をくわえて忌々しい記憶をむさぼっていた。額から鮮血と脳漿(のうしょう)を撒き散らし、力無くくずおれる母―微かに漂う硝煙と、むせるような血の香り。その時親父は…笑っていた。嗜虐(しぎゃく)の笑みに口の端を歪め、井戸の底のような暗い双眸で、俺を嘲笑った。奴は茫洋と立ちすくむ俺を眺め、その狂った想いを舌に乗せて言い放った。『私が憎いか…この女を殺した私が憎いか…』俺は、静かにうなずいた。『…ならば…憎しみを糧に、強くなれ…あまたの屍を乗り越え…骸(むくろ)をかき分け…強者を踏みにじり…その果てに力を求めろ…その先にて…私はお前の瞋恚(しんい)の炎に…この身が焼かれるのを静かに…待ち続けてやる…』俺は叫び、奴に飛びかかった。殺してやろうと思った。しかし、甲高い銃声が轟き、俺は後方に吹き飛ばされた。見ると、左足が撃ち抜かれていた。激痛は、激しい憎悪のためか、感じなかった。目を向けると、奴の姿はこつぜんと、白昼夢の如く消えていた…。辺りには、俺と、血の臭いと、母の死体だけが、むなしく存在していた…。
「いい表情ですね…Mrローハインド」  男の言葉に、俺は我に帰った。男の取り巻きたちが、俺を見て額に玉のような汗を浮かべていた。俺はようやく、自分が鬼々迫る程の強烈な殺意をほとばしらせていた事に気付く。「よぉ…イエローモンキー、てめぇどこでその話しを知った」俺は脅しを秘めた声色で言った。それは質問ではなく、確認だった。「…グレス・ローハインド…彼の口から直接聞いたと言ったら、どうします?」    俺の全身に震えが走った。 「奴の居場所を知っているのか?」 俺は思わず立ち上がった。鼓動が急激に高鳴る。 「その問いに対しては、Noという答えを捧げましょう。私が彼に逢ったのは随分と昔の話しですから。しかし…手掛りなら掴んでいます」男は淡々と述べた。だが、俺の方は熱情に躰がほてるのを止められず、いく分挑戦的に言い放つ。「ならば、その手掛りとやらを聞かせて貰おうか…」無論その方法は、手荒いものとなるだろう。「力ずくですか…まぁ、いいでしょう。元より、音便に事を進めるつもりはありませんから」男はそう言い、背後の手下から獲物を受け取る。
それは二メートルは有ろうかという長剣だった。西洋の物ではない。ナイフの切味と斧の強度、そして槍のリーチを誇るジャパニーズソード(日本刀)だ。確かに東洋では、否、世界中では最強の格闘武器言っても過言ではないが、まさか銃使いを相手に近接武器とは。しかもこの長さは、障害物のひしめく室内では確実に仇となる。 「始める前に、遅蒔きながら自己紹介といきましょう。私の名は、如月。日本語で、『月の如く』と書きます」男は刀を抜き放ち、静かに述べた。「ふん…また余談か…月に似合わず口やかましな、キサラギ」俺は侮蔑した。 「口の悪い方だ…」そう言ってキサラギは初めて笑みを浮かべて見せる。剥離(はくり)したポーカーフェイスの内側は、さらに冷淡な殺人快楽者の顔だ。あの男同じような。「私は、あなたを暗殺するようカモッラから依頼を受けました。そう言えば分かるように、私の職はフリーアサシンです。周りの者たちは私の監視役であり、万が一あなたを殺し損ねた場合、私の代わりにあなたを殺すよう命じられています」「こいつ等がか?ハッ…舐められたもんだな」 「ご安心を、万が一は有り得ません」キサ
ラギはそう言うと、刀を構えた。


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