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カノジョノキモチ
【ファンタジー 官能小説】

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カノジョノキモチ-9

 その数日後、恐れていた事が現実に起こりそうな事が発覚した。
 
 父が海外に異動する。そして、それに母もついて行くという話になった。
 それは、それでいい。お前も来て欲しいと言われた。
 申し訳ないが、それは、困る。
 困るが、どうすればいいのか。親には、しばらく考えたいと答えた。
 なんと、僕のほうがこんな事になるとは。まったく寝耳に水の話だった。
 そんな時、ミクから電話が来たのだ。

 
 彼女の部屋の前に着いた。
 なんと説明したものか。ここに来るまでに色々考えたが、まとまらなかった。
 5分ほど立ち尽くした。入るべきか、入らざるべきか。
 いや、入らないという選択肢は無いのだ。気のせいか、カレーの匂いがした。
 呼び鈴を押そうとした。押せなかった。
 隣の部屋のドアがガチャンと開く。出てくる住人と目が合い、不審そうな顔をされた。
 住人は、そのまま用事があるのか去っていった。このままでは、いけない。
 中から、何か嬉しそうな声が聞こえた。彼女の声だ。一体、何が嬉しいのか。
 その声に釣られるように、僕は呼び鈴を押した。


「あ、来てくれたのね。いつも、ごめんね」
「いや……そんな事、ないよ。なんか、いい匂いするね?」
「……あの、作ってもらってばかりだから、自分で作ってみたの。あがって?」
「あ、ああ……うん」

 カレー、彼女が自分で作ったのか。
 不器用ながらも、真面目な彼女のことだ。
 きっと、いろいろ計算して念入りに作ってあるのだろう。表情に喜びと自信があった。 
 いつもは、申し訳なさそうに僕を出迎える。
 もしかすると、僕のためにわざわざ作ったのだろうか。
 それなら、嬉しい反面、少し複雑な気もした。
 僕が彼女の為にやれる事が無くなってしまうのか。そもそも、今後どうなるのか。
 彼女は、僕を必要としてくれているのだろうか。

「あのさ……終わった後に、一緒に食べようかなって。よく出来たと思うんだけど」

 普段は気難しそうに見える彼女の表情が、今日は柔らかく見える。
 長髪を後ろで結っていた。三角巾でも被って料理していたのだろうか。
 彼女なら、本当にやりそうだな。どこか、彼女を遠くに感じた。
 頑張った彼女を見て笑いかけようとしたが、うまく出来なかった。
 彼女が怪訝そうな顔をしている。

「……あの、どうしたの? 具合でも悪い? もしそうなら」
「いや……実は、ちょっと大事な話が、あるんだ。その前に、済ませようか?」
「え、ええ。じゃあ……」


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